東京・銀座の歌舞伎座が運営していた名物そば店「歌舞伎そば」が、2023年4月30日で閉店したことが分かった。
野菜のかき揚げが美味しいと評判で、半世紀にわたって親しまれてきた。歌舞伎役者らから惜しむ声が相次いでいるが、なぜ閉店したのだろうか。
一番人気の「もりかき揚げ」が490円とワンコインで買えた
歌舞伎そばは、歌舞伎座の建物の裏手にある路地に店を構えている。
カウンター7席だけのこじんまりした店内で、歌舞伎座のサイトを見ると、一番人気の「もりかき揚げ」が490円とワンコインで買える価格が売りだった。
歌舞伎そばスタッフが運営するツイッター「黒衣(くろご)の兎」では、4月23日の投稿で、「厨房設備のメンテナンス」のため、30日まで休業しますと告知した。ところが、5月2日になって、「諸般の事情」から4月30日に閉店したことを突然明らかにした。急なお知らせになったことをお詫びしながらも、「歌舞伎座脇にあった時から、50年の長きに渡りご愛顧いただきありがとうございました」とお礼の言葉をつづっている。
歌舞伎の鑑賞前などの腹ごしらえに親しまれてきただけに、ツイッター上では、「閉店なのとても寂しい」「まさかすぎてショック...」「安くて美味しかったです。今までありがとうございました」と惜しむ声が相次いでいる。
歌舞伎役者の坂東彌十郎さんは、「私が役者になった時からの付き合い。歌舞伎座建て替えの時も閉める事なく続いたのに寂しいです」とブログで思いをつづった。同じく中村橋吾さんも、「稽古の合間、芝居の合間、皆に愛された名店であります」として、「歌舞伎そばが閉店との知らせ、心から残念です」とツイートした。
「建物が老朽化したのと、コスト増で価格帯を維持できなかった」
突然の閉店について、歌舞伎そばを運営している歌舞伎座の子会社「歌舞伎座サービス」の飲食営業部は5月2日、J-CASTニュースの取材に対し、事実だと認めた。その理由としては、次のように説明した。
「建物が老朽化してしまったのと、原材料などのコストが上がって価格帯を維持できなくなったためです。召し上がりやすい価格がお約束事になっていましたので、800円、900円に値上げするのは違う話だと思います。メンテナンスが必要になって休業しましたが、機材のコストがかかるなどして、元に戻すのも一筋縄ではいきませんでした」
歌舞伎そばが入居した建物は賃貸で借り上げており、今後については、家主の判断になって分からないという。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)