新天地で春先の活躍を見ると、伸び悩んでいたのがウソのようだ。昨オフ、現役ドラフトでソフトバンクから阪神に移籍した大竹耕太郎だ。2023年シーズン開幕から先発ローテーションに入り、3試合登板で3勝。阪神に新加入の投手では、03年の伊良部秀輝の2戦2勝を超える球団初の快挙だ。
「大竹がいなければと思うとゾッとします」
スポーツ紙記者は、その働きぶりを絶賛する。
「エースの青柳晃洋が4試合登板で1勝と本来の状態に程遠く、西勇輝も同じく4試合登板で1勝のみ。大竹がいなければと思うとゾッとします。最大の補強と言ってよいでしょう。開幕から25イニング連続無失点の村上頌樹と共にチームを支えている。元々能力は高い投手。状態が悪いなりに試合を組み立てられるし、2ケタ勝利を十分に狙えると思います」
ソフトバンクでは先発陣の厚い層の中に食い込めなかったが、能力の高さは一目置かれていた。球の出どころが見づらい投球フォームから多彩な変化球を両コーナーに投げ分ける。20年にウエスタン・リーグで最多勝、最優秀防御率、最高勝率のタイトルを獲得するなど、ファームでは格の違いを見せていたが、1軍ではなかなか結果を残せなかった。19年の5勝が自己最多。20年に2勝にとどまり、21、22年は未勝利に終わった。
阪神も先発陣の層は厚い。青柳、西勇、伊藤将司、西純矢、才木浩人、秋山拓巳、昨年4月に左肘トミー・ジョン手術を受け、復活を目指す高橋遥人も控えている。大竹は新天地でゼロから再スタートを切ったが、春季キャンプの実戦、オープン戦で好投を続けることで信頼を積み重ねた。開幕後も3試合登板で計17回2/3を投げて1失点のみ。防御率0.51と抜群の安定感を誇る。
左腕を振り続ける姿に、1軍のマウンドで投げられる喜びを感じる。まだ27歳。大竹の全盛期はこれからだ。(中町顕吾)