36歳でオタクに→45歳で初の単行本 目標は「50歳で連載漫画のアニメ化」...壮年のマンガ家が突き進む夢

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「希望の光が見えた瞬間、手が震えた」

   同人誌とは趣味で自費出版する本を指す。同人誌が売買されるイベントは「同人誌即売会」と呼ばれ、国内最大級の規模のものは東京ビッグサイトで開かれる「コミックマーケット」だ。

   モトカズさんはファンアートを通じた交流に魅了され37歳の冬、初めてコミックマーケットに出展した。そこからは定期的に同人誌を作り、即売会に持ち込んだ。「もっと絵が上手くなりたい!」という気持ちが高まっていく中、仲間内から商業デビューを果たす人も現れた。モトカズさんは「私にもこんな未来が、可能性があるんじゃないか」と感じ、マンガ家というプロフェッショナルを目標に据えた。家族も温かく応援してくれたという。

   しかし決心を固めた直後、新型コロナウイルス感染症が拡大した。多数のイベントへの参加を見送り、先行きに不安を感じる中、あるマンガ雑誌の編集者からゲスト寄稿のオファーが寄せられた。

「プロフェッショナルへの希望の光が見えた瞬間、手が震えたのを今でも覚えています」

   担当編集者と数か月の打ち合わせを重ね、商業雑誌に初めて読み切りマンガが掲載された。モトカズさんは仕事にも育児にも取り組みながら、兼業マンガ家としてプロデビューを果たした。

   モトカズさんが活動を続けるモチベーションになったのは「好き」という感情だったという。プロマンガ家の道は厳しく、その後はなかなか連載に届かなかった。楽しかったはずの創作活動が辛くなる場面もあったが、再び好きなアニメのファンアートを描くようになって原点に立ち返った。

   21年9月に誕生日を迎えたモトカズさんは、これまでを振り返ったツイートを投稿。ユニークな経歴がネットニュースで伝えられ、他のマンガ編集者からも声がかかった。翌年、その編集者からコミカライズのオファーが寄せられ、今に至る。

「一度は壊れた心身、一度は挫折した漫画家への道、これらを再び蘇らせたのは、『好きなものに没頭する』、そして『プロフェッショナルを目指す』この2つだったと振り返ります。そして、その支えになったのは、家族でした」
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