北村晴男弁護士が2023年4月26日に公開したYouTube動画で、ジャニーズ事務所創業者として知られる故ジャニー喜多川氏による少年らに対する性加害疑惑について、過去のマスコミの姿勢を糾弾した。
「怒りを禁じ得ないですね」
北村弁護士は26日、「ジャニーズ性加害問題 ジャニーズvs週刊文春」と題した動画を公開し、英BBCが3月にドキュメンタリーで報じた喜多川氏による性加害疑惑に関する視聴者の質問を取り上げた。1999年に週刊文春が報じ、訴訟となった件を引き合いに、今回の報道に関しても「事実である可能性が極めて高い」とした。
喜多川氏による性加害疑惑を報じた週刊文春の記事をめぐっては、喜多川氏とジャニーズ事務所が、計1億円余りの損害賠償を求めて東京地裁に提訴。一審の東京地裁判決では性加害の事実を認めず文春側に計880万円の支払いを命じたが、二審の東京高裁判決では「その重要な部分について真実」と認定し賠償額を120万円に減額した。ジャニーズ側は上告したものの、最高裁は04年2月に上告を棄却。高裁判決が確定した。
北村弁護士は「大変な事件ですよね。少なくとも東京高裁の判決が出た2003年7月当時、日本のマスコミがまともであれば大々的に報道されたと思います。そして日本国民の大部分がそれを知ることになった。これは間違いないです。『まともであれば』ですよ」とした上で、実際のマスコミの報道に怒りを露わにした。
「しかし、全くまともではなかった。どうしようもないマスコミばかりだったと言えると思います。マスコミの役割、報道の役割、これを考えると、怒りを禁じ得ないですね。怒りがふつふつと湧いてきます」
報道されないと「世間は全く知らない」
日常的に起こる様々な犯罪や不祥事が報道されることで「不祥事を起こした団体や個人は社会的な制裁を受ける」とするも、前出の文春報道をめぐる判決についてはこう述べている。
「判決だけだと、この場合で言うと訴訟を起こした側がジャニーズ事務所ですから、『ジャニーズ事務所が賠償金を貰う額が減った』というだけなんですね。何の制裁も受けないんです、民事では。報道されないと、この訴訟で文春側が大部分勝ったと言えるにもかかわらず、世間は全く知らない。なぜならば、世間の人たちは『判例時報』なんて読みませんしね。裁判所で裁判を傍聴する人はごくわずか。そうすると、このとんでもない行為を行っていたということを知る人は、関係者などごく僅かな人に限られるわけです」
報道されなかった後の展開として北村弁護士は、本人が「誰も自分を責めないんだな。社会で自分は許されている」などと考えるとして、「一般的なパターンとしては、同じことを続ける」との見解を述べている。
「マスコミもそのことを百も承知」
北村弁護士は、マスコミが報じなかった影響をこう話している。
「マスコミもそのことを百も承知。マスコミの役割とか、マスコミの影響というのはマスコミが一番よく知ってますね。そういう社会にとって大変重大な意味を持つ判決が出ても、自分たちが報道しなければ誰も知らない。ほとんどの人が知らない。だからその後、そんなことを知らない少年の親が、ジャニーズ事務所に自分の子供を入れる。そんなことを知らない少年が入る。そして様々なしがらみに絡め取られて、多くのなのか、一部のなのかは分かりませんけど、少年が同じような被害に遭っていくということになるわけです」
北村弁護士は「とんでもないことだと思いませんか? もちろん加害者はとんでもない。ですが、世の中にはいろんな組織、いろんな人がいて、こういう悪事を行う人間はいっぱいいるんですよ。でも、報道されることによって『ああ、もうこれをやっちゃいけないんだ』『もうこれは許されないんだ』といって、立ち直る、更生する、やめる、という大きなきっかけになっていくんですよ」と続けていた。
マスコミの影響をめぐっては、元ジャニーズJr.の岡本カウアンさんも4月12日に東京・丸の内の日本外国特派員協会で開いた記者会見で言及していた。「もし当時、大手メディアが報じていたら、ご自身の選択は変わったと思うか。例えばジャニーズに入所すること自体ためらったり、選択は変わったと思うか」とする質問に、「その時になってみないと分からない」とした上で、「もしテレビが当時取り上げてたら、大問題になるはず」で「親も多分行かせない」と指摘し、「どっちの角度から見ても、多分なかったのではないかと思う」と話していた。