嘘から生まれた歌姫「重音テト」 パロディが「本物」の商業ソフトになるまで...歩んだ15年

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UTAUの歌姫「重音テト」

――そもそも小山乃さんは、なぜ2ちゃんねるで重音テトに声を提供したのでしょうか。

小山乃「全然、感動的な話でもないのであまり言いたくなかったんですが(笑)
最初は2チャンネルの安価(編集部注:書き込み)でプロフィールができていって、次にビジュアルを考える段階に進みました。線ちゃんが今のテトのビジュアルになった線画を投下して、いろんな人が色を塗ったり違うデザインを持ち寄ったりしていました。それでも肝心な歌声がいつまでたっても出てこなかったんです。みんなすっごい盛り上がっていて、もうこれは騙せるでしょという段階まで来ていたのに。
とりあえず私が出せば後に続くものが出て来るんじゃないかと思って投稿したら、続かなかった。それだけなんですよ」

――テトの声は、地声に自らアレンジを加えられているそうですね。

小山乃「そうです。当時、私が女だとバレないように奮闘していました。当時の2ちゃんねるは女だとわかると叩かれる文化が今以上にあって、ネット上では男性のふりをしていました。『声を加工しているんだよ』ってアピールし、元の声が男とも女とも分からないようにしました」

――テトの声は少年声と言われように、低めで可愛らしい声ですよね。制作背景に納得しました。

小山乃「当時の2ちゃんねるでは声を加工する遊びが一部で流行ってました。私はその加工された声を戻して遊んだりしていました。万が一、私の声が元通りにされて聞かれるのは嫌だったので、ものすごく低く声を出して録音していたんですよ!今思い出しましたが(笑)それに私の場合、低い声の方が加工した時に可愛かったので。
テトの声は自分の声ではなく、作っているという感覚が近いです。だから私自身は『中の人』とか、声優といった表現よりも、『声の制作者』という表現がしっくり来ています」

――重音テトにとって音声合成ソフト「UTAU」はどんな存在だったのでしょうか。

小山乃「テトの制作が進められた当時、UTAUはその直前に公開された最新ツールでした。偶然にも同時期に生まれたツールがあったおかげで、テトは歌姫になりました。その1年前や1年後に同じキャラクターを作っても今のような活躍はできなかったと思います。どんな存在かっていうと難しいけど――」
エナメル「運命的な出会い(笑)」
kappa「このときから、テトに必要な時に必要な人が現れてくれるように感じます」
小山乃「UTAUは人間に近い声は出せないけれども、人間にはできない歌声が作れるところが強みです。力強い声やロボロボした声で、スペースっぽい曲はUTAUのほうがしっくりくるというアーティストさんもいます。Synthesizer Vをリリースしても、両方に個性があり使い分けられると思います」
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