「とんでもなく懐の広い返事」が返ってきた
――解散も覚悟でクリプトンに打診した結果は。
kappa「とんでもなく懐の広い返事が返ってきました。これからも一緒にやっていきたいと、商用窓口などを引き受けられるがどうするか、といった返事が返ってきて『すごいことだな』と」
小山乃「私も当時の記憶はほとんどないけれども、返事を受け取ったときのことは覚えていて。きっとだめだろうな、怒られてしまうんだろうなって思っていたら、あの明るい返信が返ってきてみんなで『わぁ!』と盛り上がったことは覚えています。懐が広すぎてびびる」
エナメル「基本的に自分たちはそれほど商業展開を重視していませんでしたが、重音テトを使って作品作りをしてくれる人たちが何の不都合もなく活動できるようにしたいという思いがありました。カラオケ配信だったりCDやグッズの展開だったり、そういう活動を不自由なくできるようにすることが我々の存在する意味ともいえます」
――これを機に重音テトの活動の幅は大きく広がりましたが、当時の心境をお聞かせください。
ベビタス「案件が来るたびに『なんかすごい話が来たよ!』って毎回びっくりしてる感じです」
kappa「テトにとって必要な人がその都度その都度力を貸してくれる。いろんな企業にテトのファンの方がいて、我々が営業するわけでなく、欲しいときに良い案件が寄せられることが何度かありました」
――印象深かった出来事はありますか?
kappa「セガより発売された音楽ゲーム『初音ミク -Project DIVA-』ですね。初音ミクと並んで出演できるんだって驚きました。ゲームに出られるなんて『すごすぎじゃないか!』みたいな。しかも、あの『セガ』ですよ。ファンの方々に対しては、最初のトップシークレット案件だった」
小山乃「イベント『ニコニコ超会議2017』で歌舞伎化されたのも印象深かったですね。役者の中村獅童さんが『テトちゃん』って呼んでくれた。ファンになっちゃいました。煽り系キャラが反映されているのもうれしかったです。」
エナメル「自分は『ねんどろいど』(編集部注:グッドスマイルカンパニーが展開するデフォルメのフィギュアシリーズ)ですね。いつか『ねんどろいど』が出たらいいなって3Dを作っていたくらいで、悲願でした」
ベビタス「エイベックスからテトのメジャーCDが出せたり、HBC(北海道放送)のPRキャラクターに就任して北海道限定ですがテレビに登場したりもしましたね。10周年の節目で初音ミクシンフォニーに参加させてもらったり、即売会イベント内で展示ブースを展開できたのも印象に残ってます。」
小山乃「企業案件の話が多かったですが、学生から声がかかったこともうれしかったです。おととし、美術系の学生の企画に重音テトをテーマにした学園祭の企画を行いたいと打診を受けました。今や15周年を迎える古いキャラクターではあるものの、大学生が声をかけてくれた。昔からのファンだけでなく次の世代に引き継がれ、若い子たちもテトを好きになってくれてうれしいです。テトの露出を続けていてよかったな、きちんと歩んできたんだなって実感しました」