誰も歩いていなくても...「お家の中にレーザービームを通すように」
――ほかにも、「ありがとう」を言うケースはあるのでしょうか。
「私もときどき使うのですが、選挙カーが通るとワンちゃんが『ワオーン』と吠えることが多いんですね。そんなときに『ワンちゃんからのご声援、頑張れと言っているようでございます!ありがとうございます』と言うことがあります。また、後ろの車からクラクションを鳴らされたときに『クラクションでのご声援ありがとうございます!』とアナウンスしたこともありました。大事にしているのは、選挙を戦うチームの雰囲気を和ませることです。候補者は常に逼迫した状況を戦っていますので、たとえ少し厚かましいくらいでも、何でも前向きに明るくとらえることで、チームの士気を高められればと考えています」
――ツイッター上では、周囲に全く人がいないときでも選挙カーが「ありがとうございます」と言っていた、という声も聞かれました。
「車の中にいると周囲の状況しか分かりませんが、私がウグイスをやるときは、空の上からグーグルアース(バーチャル地球儀サービス)で選挙カーを追いかけるように言葉を考えています。例えば住宅街で、誰もお外に出ていらっしゃらない場合は『外に人はいなくても、お家の中にはいらっしゃるはずだ』と考えて、お家の中にレーザービームを通すように、ご在宅の方と自分が会話しているような気持ちでアナウンスすることが理想なのではないでしょうか。もし、そこで『ありがとうございます』と言えば、選挙カーを見えていない方に『この候補者は人気があるのかもしれない』と思わせることができますよね」
――幸慶さんのお話からは、有権者への感謝をとても大事にされていることが伺えました。なぜ「ありがとうございます」が重要だと捉えているのでしょうか。
「私のレッスンでは、候補者の名前、次に『ありがとうございます』、そして政策の順に重要だと教えています。『ありがとうございます』は接客業では魔法の言葉と言われます。まず『ありがとうございます』と言わなければ、人は『心の窓』を開いてくれないんですね。例えば遠くの集落に伺う時に、ご在宅の方に向けて大きな声で『皆様お世話になっております!ありがとうございます!○○でございます!』と言ってから伺うと、外に出てきてくださる方の確率がすごく上がるんですね」
選挙カーの何気ない「ありがとう」には、ウグイス嬢たちのしたたかな思いが込められているのかもしれない。