中国人ボクサー「世界ヘビー級暫定王座」の快挙、日本に影響は? 専門家が語る期待と「育成の難しさ」

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   プロボクシングのWBO世界ヘビー級暫定王座タイトルマッチが2023年4月16日、英カッパー・ボックス・アリーナで行われ、挑戦者・張志磊(中国、39)が暫定王者ジョー・ジョイス(英国、37)を6回TKOで破り王座を獲得した。世界主要4団体(WBA・WBC・WBO・IBF)でアジア系初のヘビー級暫定王者となった。

  • 但馬選手(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)
    但馬選手(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)
  • 但馬選手(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

日本ボクシング界はヘビー級活性化目指す

   現在、世界ヘビー級は2人の正規王者が存在しており、オレクサンドル・ウシク(ウクライナ、36)がWBA・WBO・IBFの3団体王座を保持。WBC王座はタイソン・フューリー(英国、34)が保持している。WBO暫定王者の張はウシクの有力対戦候補となり王座統一戦出場の可能性が出てきた。

   かつてはモハメド・アリ、マイク・タイソンらがヘビー級の頂点に君臨し世界中の注目を集めた。多くの世界王者を輩出してきた日本ボクシング界にとってヘビー級の世界王者は長年の悲願である。「暫定」の2文字が付いているものの、最重量級で世界の頂点に立った張の快挙は日本ボクシング界にどのような影響を与えるか。J-CASTニュース編集部はTMKジムの金平桂一郎会長(57)に話を聞いた。

   日本のヘビー級は、但馬ミツロ(KWORLD3、28)が日本王者に君臨している。現状、日本王者は存在しているが、日本ボクシングコミッション(JBC)の最新日本ランキングには1人の選手も入っていない。したがって但馬は日本のジム所属選手相手に日本王座の防衛戦を行えない状況にある。

   金平会長は「日本ボクシング界はここ10年間、ヘビー級を活性化させようと取り組んできました。まだまだですが相当アクティブにやってきました」とし、「張選手の暫定王座獲得は日本のみならず世界に与えた影響は大きい」と指摘した。

   そして今年3月に現役引退を発表した元WBA世界ミドル級王者・村田諒太氏(37)の功績に言及し、張の快挙に結び付けた。

「ヘビー級の課題は日々のトレーニング」

「村田選手が重量級であるミドル級の扉をノックして、ミドル級がよりリアルな階級になった。そして今度は中国の張選手がヘビー級暫定王者になった。日本人も続くことができるのではないか。そのようなリアル感が持てるようになると思います。これまで野球やバスケットボール、バレーボールなどを選んでいた運動神経の良い体格の大きい子供らがボクシングに目を向けてくれればと期待しています」

   金平会長の父・正紀氏(故人)は90年代にロシアからアマチュア出身のヘビー級選手を招へいし、プロの世界王者育成に取り組んだ。しかし、アマチュア時代に世界選手権や五輪などで実績を残した選手たちはプロのリングで活躍することができなかった。当時、マネジャー兼トレーナーとして育成に携わっていた金平会長は日本でヘビー級選手を育てる難しさについて次のように語った。

   「当時はトレーニング環境に問題がありました。練習相手となるようなヘビー級の選手がおらず、スパーリングパートナーがいませんでした。それが十分な結果が出なかった理由のひとつでした」と振り返り、日本の現状に言及した。

   金平会長は「課題は当時と変わらずスパーリングパートナーを含めた日々のトレーニングです。ナチュラルなヘビー級のパートナーがなかなかいない」とし、「他の格闘技を見るとヘビー級の選手がいます。中にはボクシングを習得したいという選手がいるのでうまく交流していくのもひとつの手だと思います。今は昔と違い異種格闘技との垣根が低くなってきているのでやりやすい環境にあります。国内でヘビー級選手の粒が揃ってくれば急速に世界に近付くと思います」と期待を寄せた。

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