「楽で合理的に稼げることに対するモチベーション」
「推し活」の中でも、Z世代は「ホスト」にハマる女性が多いと中村氏は話す。
今回の著書『同人AV女優』にも、いわゆる「ホス狂い」になるZ世代の女性のエピソードが記されている。ホス狂いとは「ホストに没頭することを生活の最優先事項にする女性たちの総称」と説明されている。
中村氏:ホストは異常な金額がかかる。とても売春では稼げないぐらいのお金が必要な世界で、女性たちは必死にお金をつくりたがっている。楽で合理的に稼げることに対するモチベーションがすごい。2時間程度で撮影が終わる同人AVはそういう女性たちに選ばれています。
『同人AV女優』では、ホス狂いだけでなく、専業主婦、女子大生、元アイドル、奨学金を返済中の元適正AV女優と、様々な女性が同人AVに出演する経緯を語っています。
中村氏は日本の平均賃金が「安すぎる」、世代格差が著しいと指摘する。大学の授業料が高騰している一方、親世帯の平均収入が減っているため、そもそも大学に通うことが難しくなっているとして、次のように述べる。
中村氏:大学生が真面目にアルバイトをしても月5万円程度しか稼げない。親世代もお金がないので大学生の娘への経済的援助も限定的になる。女子大生たちが勉強するだけでなく、学費、生活費を稼げなきゃならなくなると計算が合わなくなる。「女を売る、カラダを売ることをした者から勉強する権利を与える」みたいな現状がある。10年ほど前から勉強をしたい真面目な女の子がカラダを売る、という異常な現象が起こっています。
――なるほど。
中村氏:大学生の貧困、それと世代格差が大前提にあります。大学進学を控えた高校生のときに風俗や売春をすることを覚悟する女性も多く、あらゆる性格や属性の女性たちがカラダを売ることを余儀なくされている。隠れてやる仕事なので、みんな不安や不満がある。同じ境遇で風俗や売春している女性たちがSNSで繋がって女子会をひらいている。
その女子会で誰かからホストに誘われたり、同人AVの存在を教えてもらったりしている。そうして「最初は学費のために風俗嬢になったけど、2年後にはホス狂いになりました」みたいなことが起こるのです。