2023年4月9日に行われた統一地方選の前半。維新の大躍進が目立った。
大阪は、府知事選挙で現職の吉村洋文氏、大阪市長選挙で新人の横山英幸氏が当選し、前回に引き続き大阪維新の会がダブル選挙を制した。保守分裂となった奈良県知事選挙は日本維新の会の新人の山下真氏が当選し、大阪府以外で初めて維新公認の知事が誕生した。
大阪府議会・市議会では維新が過半数の議席を獲得した。維新は大阪府知事選、大阪市長選、大阪府議会選、大阪市議会選のクワッド勝利だ。今回投票が行われた41道府県議会議員選挙でも選挙前の議席を大幅増させた。ただし、奈良県知事選は、自民の内部分裂による漁夫の利だ。
国政レベルでの自民・公明の連立にも影響があるかもしれない
日本維新の会の馬場伸幸代表は記者会見で「大阪府と大阪市の首長と、議会の過半数を預かることになれば『大阪都構想』に代わる次の大きなテーマを考えていく必要がある」と述べ、その上で、公明党の衆議院の現職議員がいる大阪と兵庫のあわせて6つの小選挙区にこれまで候補者の擁立を見送ってきたことについて「公明党との関係は一度リセットさせていただく」とし、次の衆議院選挙では候補者を擁立する可能性に言及した。これは、国政レベルでの自民・公明の連立にも影響があるかもしれない。
大阪知事再選の吉村氏は、大阪へのIR誘致は民意を得たとした。過去に二度住民投票で否決された大阪都構想については、現時点での予定はないが今後の任期4年間で何が起きるかわからないとした。はたして三度目の正直なのか、二度あることは三度あるのか。
維新の勝因は、身を切る改革
これからの国政選挙補選、後半戦の統一地方選で、維新の勢いはどうなるのだろうか。前半戦を見る限り、維新は地方選で着実に力をつけており、国政選挙では地方での底力が基盤になるので、国政への影響もでてくるだろう。
大阪クワッド勝利で公明牙城が揺らぎ、自公連立に影響があると政権枠組み変更にもなりかねない。公明党の親中ぶりは目に余るものがある。自民や維新でも多くの議員でその傾向があるとの見方もあるが、共産党は維新をかなり警戒した発言をしているので、公明党よりましかもしれない。大阪では、自民と共産が組んでも維新の勢いが止められなかった。
維新の勝因は、身を切る改革だ。具体的には、大阪府議会や市議会での定数削減だ。定数削減は住民にわかりやすい戦略だが、選挙区の定数が減るので相対的に弱い政党が負け、維新の強さを際立たせている。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。