「『おニャン子クラブ』では、メンバーが脱退することを『卒業』と言いました」
「学校を卒業する」という意味ではなく「降板する」もしくは「退任する」という意味で使われる「卒業」という言葉。いまや人口に膾炙(かいしゃ)するが、「サンデーモーニング」の放送の際には「卒業」ではなく「降板」が使われ、視聴者からは賛同の声が上がったのも事実だ。
「降板」もしくは「退任」という意味で、「卒業」が使われ始めたのはいつ頃からか。J-CASTニュース編集部は国語辞典編纂者の飯間浩明氏に聞いた。
「私自身がこの意味の『卒業』に注目したのは2006年でした。私の集めた例を見るかぎり、メディアでもこの頃からよく議論されるようになっています。たとえば、エッセイストの青木るえかさんは『週刊文春』2006年4月27日号で、レポーターが司会者から『○○さん、今日で卒業です』と花束をもらうのを見るのがつらい、という趣旨のことを書いています」
すると、21世紀になってからの用法ということだろうか。
「そうでもないんです。雑誌では、1970年代あたりからこの用法らしい例が現れています。1980年代に人気を誇った『おニャン子クラブ』でも、メンバー脱退を『卒業』と言っていました。もっとも、まだ今日ほどは一般化していませんでした。そこで、『20世紀の終わりごろから例が見られ、21世紀になって広まった』とまとめていいでしょう」
意外に長く使われているという印象も受けるが、「降板・退任」の意味で「卒業」という言葉を使うのは日本語として変なのか、もはや違和感はないのか。
「『変かどうか』は個人の感覚によるので、決着はつかないですね。逆に、『○○さんは本日で担当を終えます』では事務的で冷たい、と感じる人もいるでしょう。特に、若い世代では小さい頃からこの意味の『卒業』に馴染んでいるので、違和感がない人も多いでしょうね。メディアで『卒業』が愛用されるのは、『新しい用法で耳障りだ』などのデメリットと、『今後を応援するニュアンスがある』などのメリットを天秤にかけて、結局使い続けると決断したということでしょう」
(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)