朝日新聞は2023年4月5日の朝刊1面に掲載した社告で、購読料の値上げを発表した。朝日の値上げは21年7月1日以来、1年10か月ぶり。その前の消費税転嫁分をのぞく本体価格の値上げは、さらに27年7か月前の1993年12月だった。新聞用紙の価格高騰を背景に、異例のハイペースで値上げに踏み切った。
地域紙や夕刊紙、スポーツ紙が相次いで値上げする一方で、読売新聞は「少なくとも向こう1年間」は値上げしないことを発表。こういった中での朝日の値上げで、全国紙の間でも対応が分かれたことになる。朝日は東海3県で夕刊の発行をやめることも発表。3月末の毎日新聞に続く動きで、市場の縮小が続いている。
「本文で使う文字を12年ぶりに拡大し読みやすくします」
社告によると、朝夕刊セットで月額4400円(税込)の購読料を5月1日から4900円に引き上げる。朝刊のみ(統合版)の地域は3500円から4000円になる。朝刊1部売りも160円から180円、夕刊も60円から70円に値上げする。いずれも10%を超える値上げ幅だ。
社告では、値上げの経緯を次のように説明。最初に新聞用紙の高騰に言及した。
「新聞用紙など原材料が高騰し、みなさまにお届けする経費も増加しています。コスト削減を続けていますが、報道の質を維持し、新聞を安定発行するため、ご負担をお願いせざるをえなくなりました」
「本文で使う文字を12年ぶりに拡大し読みやすくします」とも説明。「情報はこれまで通り十分にお届けします」と断ってはあるものの、用紙代がかさむ増ページは現実的ではなく、文字数は減るとみられる。
日本ABC協会がまとめた22年下期(7~12月)の平均販売部数は、読売新聞663万6073部、朝日新聞397万4942部、毎日新聞185万9147部、日経新聞168万0610部、産経新聞99万9883部。「コロナ前」の19年下期と比べた減少率は、順に16.4%、26.0%、19.9%、26.1%、26.4%で、3年で部数の4分の1が消える状況だ。読売新聞は3月25日の朝刊1面の記事で「少なくとも1年間」値上げを見送ることを発表。朝日新聞は逆の判断をしたことになり、残る3社が追随するかが注目される。
「東海3県では朝刊だけを希望される方が増えており」
朝日は同時に、5月から東海3県(愛知、岐阜、三重)で夕刊の発行をやめることも発表。新聞業界では、朝刊または夕刊の片方しか購読しない「セット割れ」が問題化しており、名古屋本社版1面の社告では「東海3県では朝刊だけを希望される方が増えており、朝刊のみをお届けすることにしました」と説明している。
前出の22年下期(7~12月)の平均販売部数によると、朝日の名古屋本社版の部数は朝刊が21万7903部、夕刊が4万1036部。19年下期と比べると、それぞれ24.9%、29.7%減少している。
朝夕刊両方を購読する「セット率」をみると、22年下期は中日新聞12.0%、朝日新聞18.8%、日経新聞49.3%、毎日新聞25.7%だ。東海地区では朝日が毎日に次いで夕刊の発行部数が少なく、毎日は23年3月いっぱいで夕刊の発行をやめている。朝日新聞が全国で発行している夕刊部数は123万5184部で、セット率は31.1%だ。全国平均よりも低いセット率や部数の減少を背景に夕刊の休刊を決めたとみられる。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)