なぜタモリ倶楽部は長寿番組になれたのか 深夜一筋40年...識者が指摘する「タモリの特殊性」

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   「タモリ倶楽部」(テレビ朝日系)の放送が2023年3月31日深夜(4月1日未明)に終了した。

   番組は1982年10月に放送を開始。MCはタイトルの通りタレントのタモリさん(77)が務め、毎回多種多様なゲストを招いて様々な企画に挑戦する姿が視聴者から好評を博してきた。外国語の歌詞があたかも日本語であるかのように聞こえてしまう現象を楽しむコーナー「空耳アワー」も番組の人気をけん引してきた。

   40年もの長期間にわたって放送が続いた理由はいったい何なのか? J-CASTニュースはメディアエンターテインメントを研究する同志社女子大学の影山貴彦教授に意見を聞いた。

  • タモリさん(2015年撮影)
    タモリさん(2015年撮影)
  • 印象に残った「空耳アワー」作品上位5選
    印象に残った「空耳アワー」作品上位5選
  • 印象に残った「空耳アワー」作品(6位以下)
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  • タモリさん(2015年撮影)
  • 印象に残った「空耳アワー」作品上位5選
  • 印象に残った「空耳アワー」作品(6位以下)
  • 印象に残った「空耳アワー」作品(6位以下)
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「深夜番組であり続けたこと」が長寿の秘訣

   なぜ、タモリ倶楽部は40年半の長きにわたって放送を続けてこられたのだろうか。編集部の取材に対し、影山氏はその要因には大きく分けて2つあると指摘する。

   まず挙げたのは、番組がゴールデンタイム(19時から22時まで)やプライムタイム(19時から23時まで)に行かず、深夜番組であり続けた点だ。番組の歴史をさかのぼると、何度か放送時間帯が変わったものの、その開始時間はいずれも日付が変わった0時以降だった。

「タモリ倶楽部はサブカル番組の代表例と言って良い番組です。サブカルチャーというものは日の当たるところに置きすぎてしまうと、鮮度が落ちたり魅力が薄まってしまうものなので、ゴールデンタイムやプライムタイムというメインストリートを回避し続けたのは賢明だったと思います」

とかく、深夜番組がゴールデンタイムやプライムタイムへの進出を果たすと、視聴者からは「つまらなくなった」という声が上がりがちだ。これについて影山氏は、深夜番組が陥りがちな「宿命」と、そうはならなかったタモリ倶楽部の番組としての方向性を指摘する。

「通常、深夜番組は人気が出てくると、番組改編期のゴールデンタイムやプライムタイムに特番という形で試験的に放送を行い、継続的に視聴率が取れると判断されると『昇格』を果たします。ただ、その際には、早い時間帯に放送するということで、よりたくさんの視聴者やスポンサーに納得される内容になるべく、放送内容がどうしても最大公約数的なものにせざるを得なくなり、その結果、深夜時代の面白さを維持できずに放送終了を迎えてしまうという例は枚挙にいとまがありません。

また、『昇格』を果たすことはなく早い時間に特番をやったというだけでも、その深夜番組の内容が特番をやる前に比べて魅力を失ってしまい、放送終了を迎えるというのはよくあることなんです。しかし、タモリ倶楽部はそのような早い時間帯への『色気』を見せることなく最後まで放送を行ったことで、番組としての魅力を保ち続けることが出来ました」

「ご本人の雰囲気が好循環を生み出していた」

   影山氏は放送が長期に及んだ2つ目の要因として、タモリさんが番組に出演する際の雰囲気が好循環を生んだのではないか、と指摘した。

「タモリさんはテレビ番組の中で常に、まるで普段着のような『自然体のままの出演』を続けていらっしゃいます。テレビ界には他にも自然体で出演しているかのように見える方はいらっしゃいますが、皆さん、やはり、頭の中では『どうやったら番組が面白くなるか』でいっぱいであり、カメラが回っていないところではスタッフへの指示を多分に行っています。しかし、タモリさんはそのようなことを一切言わない方としてテレビ界では知られています」

その結果、スタッフたちが奮起するのだという。

「これにより、スタッフたちはタモリさんに面白いと思ってもらうべく、番組作りの際にはあらゆる努力を惜しまなくなるようになります。その結果として番組が活性化するため、タモリ倶楽部は長期間にわたる放送を実現させたと言えるかと思います。あたかも普段着で出演しているかのようなご本人の雰囲気が好循環を生み出していたわけであり、他の芸能人には真似できない点ではないでしょうか」

   こうしたタモリさんの姿勢は、番組制作側への影響だけでなく、視聴者の好感も呼んだのではないか、と影山氏は指摘する。「その楽し気な、あたかも雑談を共有するかような雰囲気が視聴者に好まれていたと言えるでしょう」。

(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)

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