「黒字化100%ムリ」それでも地域のために 福島・浪江町「スマホで呼べる車」がもたらす未来

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   ただ、「スマホを使って呼ぶ」仕組みが、高齢者にはハードルにならないか。宮下さんによると、確かに60代以上でスマモビを利用しない理由のトップがスマホだという。ところが頻繁に利用する高齢者は逆に、「スマホで呼べるのは便利」と答える。それなら、スマホに不慣れな地元のお年寄りに使い方全般を教えようと考えた。

   22年5月、日産と東京大学が共同で「浜通り地域デザインセンターなみえ」を浪江駅近くにオープンした。ここに、スマモビの相談窓口を設置。スタッフの学生が、スマホやパソコンの相談全般を受けるようにした。浪江町が実施する「スマホ・タブレット相談会」にも協力する。

「『相談場所が出来た』と、気軽に足を運んでくれる人が増えました。コミュニティーとの、こうした地道な関係作りが大切です」

と、宮下さん。訪れた人のスマモビ登録は、21年の10人に対し、22年は8月までで46人となった。登録者を増やして利用動向のデータを多く集めて分析し、車両台数や配車アルゴリズムの改善、バス停設置に生かして、サービスの向上につなげたいと意気込む。

   スマモビのようなオンデマンド型の送迎サービスは、既存の路線バスはじめ公共交通機関と比べて、費用面で持続可能性が高いとも言われる。だが宮下さんは、「運賃だけで黒字化は、100%ムリ」と言い切る。ただ、交通事業だけで判断せず、地域にどれほど有益かが大事だと指摘した。仮に赤字でも、交通が便利になったおかげで住民が増えれば、税収もアップする。外からの訪問者が食事や買い物をして消費が活発になれば、地域経済にはプラスだ。トータルで黒字になるなら、スマモビのような事業の継続はリーズナブルと言える。

   来年度をめどに、浪江町だけでなく福島県内や浜通りでもスマモビの実施検討を議論していきたいと、宮下さんは願っている。

(J-CASTニュース 荻 仁)

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