2023年の1月期ドラマ「大病院占拠」(日本テレビ系)の放送が3月18日に終わった。
ドラマでは「嵐」の櫻井翔さん(41)が主演。体を張ったアクションシーンなどが視聴者の注目を集めたが、あわせて話題に上がったのが、「嘘だろ」というセリフだ。J-CASTニュース編集部はこのセリフの効果について識者に意見を求めた。
「『嘘だろ』がクセになる最高のドラマでした」
作中で櫻井さん演じる武蔵三郎刑事の口から「嘘だろ」が幾度となく放たれていた。爆発直前の時限爆弾を発見した際など命の危険にさらされた瞬間はもちろん、武装集団の目的に思いを巡らせるシーンにおいても見られた。最終回となる第10回のラストでは娘から絵を贈られたシーンで、喜びに顔をほころばせながら「嘘だろ」が飛び出していた。
これら、「嘘だろ」というセリフの多様には「櫻井翔ドラマで、嘘だろのセリフ多すぎやろ」といった声がSNSで上がった一方、
「毎週『嘘だろ...!?』っていう櫻井くんの声が聞こえてきて面白い」 「ハラハラそして感動し正義とは何かを考えさせられ、『嘘だろ』がクセになる最高のドラマでした」 「嘘だろ...終わりを貫いたのは面白かった」
といった好意的な声も目立った。
事実、制作側の「嘘だろ」への思い入れも熱い。日本テレビはYouTubeで、武蔵が「嘘だろ」を放つシーンを集めた動画「『大病院占拠』嘘だろ!まとめ」を2本公開している。
さらに、最終回前日の3月17日には「【嘘だろ!】最終回直前!櫻井翔スペシャルインタビュー『大病院占拠』」を公開。櫻井さんが第5回について、当初では「嘘だろ」のセリフがない放送回だったにもかかわらず、「嘘だろ」のシーンを第7回の制作の最中に撮影し、急きょ加えたことを明かしていたほどだ。
「主人公の『焦り』『困惑』の表現としても機能」
視聴者を魅了した「嘘だろ」の多用だが、「ネットと朝ドラ」の著書で知られるドラマに詳しいライターの木俣冬氏はこのセリフの効果について以下のように指摘する。
「まず『嘘だろ』と主人公に言わせることで、『このドラマは嘘みたいなありえない話をわざとやっています』とあらかじめお断りしたのだと思います。それに加えて、最初は主人公の『素直な心情吐露』でもありました」
しかし、作中で多用されていくことで、本来ならば信じられない状況に対して使う言葉であろう「嘘だろ」が微妙に意味を変えながら様々な効果を発揮していたとも明かす。
「同じフレーズが繰り返されることで、『嘘だろ』と言いたい状況が続くことへの主人公の『焦り』『困惑』の表現としても機能するようになりました。やがて、それが決め台詞的な『アクセント』として活用され、視聴者の『ツッコミたい気持ちの代弁』とメタ化していったように思えます。短いセリフで状況や心情を説明できる、誰にもわかりやすい平易な言葉を考えた脚本家もすばらしいし、櫻井翔さんが場面ごとにニュアンスを変えようと工夫していたのも良かったと思います」
「ドラマは『視聴者が使いたくなるような決め台詞』が生まれると成功する」
事実、ツイッターには、
「大病院占拠、ツッコミどころ満載なのもわかる、あれはツッコミながらわーわーみるドラマでしょ」 「ツッコミどころは満載ですね。これはもう、櫻井くんの、『嘘だろ~!?』を聞くために見ましょう」 「武蔵『嘘だろ』からの視聴者に『嘘だろ』を言わせたい流れ好き」
といった声も上がっていた。
最後に、木俣氏は「半沢直樹」シリーズには「倍返しだ!」という決め台詞が、「金田一少年の事件簿」シリーズには「謎はすべて解けた!」という決め台詞があるとしつつ、
「ドラマは『視聴者が使いたくなるような決め台詞』が生まれると成功するものなので、『嘘だろ』は決め台詞として良い効果をあげたと言えるでしょう。主人公がいつ言うかを待つ楽しみ、言ったときに一緒につぶやける楽しみなど、お祭り感覚を盛り上げたのではないでしょうか」
と指摘した。
(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)