高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
岸田首相ウクライナ電撃訪問の「オープンな報道」 タイミングを考えると、より安全かつ効果的メッセージに

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   2023年3月21日の春分の日の正午頃、岸田首相がウクライナを電撃訪問というニュース速報があった。そのとき、WBC(ワールド・ベースボール・クラッシック)準決勝で日本がメキシコ相手に劇的なサヨナラ勝利をしたときだったので、筆者は2つのビッグニュースに驚いた。

   どうも、インド訪問中の岸田文雄首相が同行記者にも知られぬように準備していたらしい。

  • 会見した岸田首相とゼレンスキー大統領(写真:AP/アフロ)
    会見した岸田首相とゼレンスキー大統領(写真:AP/アフロ)
  • 会見した岸田首相とゼレンスキー大統領(写真:AP/アフロ)

日ウクライナ首脳会談はかなりの程度、中ロ首脳会談を相打ちにした

   ところが、自民党の外交部会では、首相の現地入りが事前に報じられたことについて「ばれているなら報道協定をしなくては駄目だ」などと、政府の情報管理を疑問視する声が複数出た。情報、危機管理の観点から問題を指摘する声はかなりある。

   なにしろ戦時下であるので、首相訪問は極秘に進められればそれに越したことはない。筆者も、電撃訪問というわりには、随分とオープンだなと感じた。

   しかし、このタイミングを考えると、むしろオープンにしたほうがより安全で、世界へのメッセージもより効果的であると思う。

   実は、ほぼ同じ日時の20~21日、中国の習近平国家主席がモスクワを訪問しプーチン大統領との首脳会談があった。22日に行われた日ウクライナ首脳会談はかなりの程度、中ロ首脳会談を相打ちにした。

岸田首相の不測の事態の確率も少なく出来るだろう

   日ウクライナ首脳会談の場所はキーウであるが、中ロ首脳会談のクレムリンの豪華絢爛とはほど遠かったが、世界へ向けての絵柄としては上出来だ。安全なところで優雅に振る舞う習近平主席とプーチン大統領、かたや戦時下での岸田首相とゼレンスキー大統領は、これまでにない、日本の世界へのアピールになる。

   と同時に、日本も中国もアジアからのお客であるが、日ウクライナの民主主義と中ロの専制主義の対比はいい。さらに、本来であれば弱点である日本からの殺傷能力のない装備品も、中国からロシアへの武器供与を牽制できる。

   そもそも、日本はまともな軍隊を持っていないので、どこまで海外で首相の護衛が出来るだろうか。習近平主席がロシアを訪問しているときなので、ロシアも迂闊に出来ないという意味で、オープンにしたほうが、岸田首相の不測の事態の確率も少なく出来るだろう。今回のウクライナ訪問は、外務省でも21日昼ごろに公表している。それ以前に、特定のメディアには、今回のウクライナ訪問で取材を認めているような画像も報道されている。もちろん、ロシア側には事前に連絡されている。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。


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