100年後を見据えて
2019年に民泊交流施設「ZICCA」をオープンした。葛尾村での長期滞在を可能にする拠点だ。村外から来た人が長く滞在すればそれだけ村の魅力を理解し、地域にコミットし、つながりが強くなる。
学生や社会人で、村で実施したいプロジェクトをマネジメントできる人材育成も行った。多い時は年間100人ほどのインターンが集まったが、今ではこうした人たちが独自のプロジェクトを立ち上げる「自走」が始まっているという。
葛力創造舎のウェブサイトでは、「集落を持続させていくには、1人のスーパーマンの力ではなく300人の一般人の力を引き出すことが必要」との方針掲げている。その実現には、自分の個性でどうやってコミュニティーを創造していくか、いかに自分の言葉で語り、自分事ととらえ、「これをやりたい」と楽しめるか――こういう自発的な動きが次々と芽生え、お互いが協力しなければならない。「これは元々の農村の考え方で、葛尾村に合っているし、強みが出せる」と下枝さん。一部の人だけでなく、村全体のパワーが欲しい。
では全村民が幸せになるには、どのぐらいの時間が必要か。
「100年」
下枝さんはこうつぶやくと、少し笑みを浮かべた。村の体質が本質的に変わり、落ち着いていくまでに要する時間だという。「孫の世代」になり、社会のあり方が変わるために100年。そこまで先を、見据えている。
(J-CASTニュース 荻 仁)