2023年3月16日に行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の準々決勝イタリア戦で、ファウルゾーンに飛んだ打球を観客が身を乗り出してキャッチしようとした行為について、試合に影響を与えたのではないかとインターネット上で批判されている。
この打球はグラウンドに落ちて、ファウルと判定されている。日本の公認野球規則では、観客の妨害行為が認められれば、打者がアウトになるが、この場合はそうはならなかった。
吉田正尚左翼手が捕球体勢に入るかのように見えたが...
4回表のイタリアの攻撃で、1死1塁のピンチを迎えたシーンだ。大谷翔平投手が渾身のストレートを投げ込み、イタリアのブレット・サリバン選手が左方向に打ち上げると、大谷投手は、雄叫びを上げた。161キロが表示された速球で、打ち取ったと思ったかもしれない。
吉田正尚左翼手と村上宗隆三塁手がファウルゾーンで打球を追い、吉田選手が捕球体勢に入るかのように見えた。ところが、ファウルゾーンにせり出す東京ドームのエキサイトシート最前列にいた少年が、左手にグラブを着けて身を乗り出し、ボールを受けた後、ボールはグラブからこぼれてグラウンドに落ちた。
この打球は、ファウルと判定され、試合は続けられた。少年は、大谷投手と同じ背番号のユニフォームを着ており、そのまま席に座った。
しかし、吉田選手が捕球していれば、試合の流れは変わったのではないかと、ネット上では、少年の行為への非難が相次ぐ騒ぎになった。
「思わず夢中になってボール追っちゃったんだろう」と擁護する声もあったが、「アウトに出来たのに」「試合妨害じゃないのか」といった声が次々に寄せられた。
WBCでは、17年の大会で、観客がホームラン性の当たりをグラブでキャッチして物議を醸したことがある。
「捕球体勢に入ってなかったので、妨害とはみなされなかった」
17年大会初戦のキューバ戦で、山田哲人選手が放った打球をレフトスタンドの少年が身を乗り出してキャッチし、当初はホームランとみられたが、その後の審判の協議で二塁打と判定された。
当時の報道などによると、この少年は、警備員に裏の通路に呼び出され、厳重注意を受けていたという。少年は、ボールを持った写真をツイッターに投稿しており、ネット上でバッシングが過熱して炎上騒ぎにまでなった。
このときは、今回同様に、日本が勝って、試合を左右するまでにはならなかった。ただ、米メジャーリーグでは、男性ファンがファウルフライの飛球を弾き落とし、シカゴ・カブスがワールドシリーズ進出を逃すきっかけになったとされる「スティーブ・バートマン事件」(03年)が知られている。今回の行為も、WBCの流れを変えかねない可能性はあったようだ。
日本の公認野球規則では、「6.01(e)」の「観衆の妨害」の項目で、「打球または送球に対して観衆の妨害があったときは、妨害と同時にボールデッドとなり、審判員は、もし妨害がなかったら競技はどのような状態になったかを判断して、ボールデッド後の処置をとる」とある。そして、その説明では、「観衆が飛球を捕らえようとする野手を明らかに妨害した場合には、審判員は打者に対してアウトを宣告する」とされている。
今回のケースについて、日本のプロ野球関係者は3月17日、J-CASTニュースの取材に次のように解説した。
「WBCでも、この部分については、規則は同じです。野手が捕球体勢に入っていませんでしたので、明らかな妨害とはみなされず、打者はアウトにはなりませんでした。ファウルと判断されたわけです。観客の少年については、どんな対応が取られるのかは分かりません」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)