ノーベル文学賞作家の大江健三郎さんが死去したことが2023年3月13日に発表され、国外でもその功績をたたえる報道が相次いだ。
特徴的だったのが韓国での報道ぶりだ。大江さんは日本によるアジア侵略に関する発言も多い。韓国メディアでは、韓国で行われたシンポジウムに大江さんが出演し、日本側による謝罪の必要性を主張してきたことも報じている。
「日本はいくら謝罪しても十分ではないほど大きな犯罪を韓国に対して犯した」
韓国でも、大半の主要メディアが大江氏の死去を報道している。一般的な経歴に加えて、さまざまな角度で韓国との接点を紹介した。東亜日報は、大江氏がノーベル文学賞授賞式の講演で日本によるアジア侵略に言及した点を指摘。さらに、1995年に東亜日報の後援で開かれたシンポジウム「解放50年と敗戦50年」で、詩人の金芝河(キム・ジハ)氏との対談で
「日本は敗戦後、新生のために韓国人に謝罪し、過去の罪を清算しなければならなかったが、できなかった」
と述べたと報じた。
中央日報は、大江さんが「日本政府が慰安婦問題に関して韓国に積極的に謝罪しなければならないと促した」と紹介した。その一例として、15年3月に韓国の延世大で開かれた「延世-金大中世界未来フォーラム」で、
「日本はいくら謝罪しても十分ではないほど大きな犯罪を韓国に対して犯した。しかし、まだ日本は韓国人たちに十分に謝罪していない」
と述べたことを挙げた。
「生涯アジアで起こったことを記憶し、贖罪しなければならない」
左派のハンギョレは、大江さんを「『醜い日本』を告発、告白してきた実践的知性として、国際社会の平和運動に身を捧げてきた」と表現。14年6月13日に韓国のキム・ヨンホ慶北大名誉教授と行った対談で、大江さんは次のように述べたと報じた。
「日本は中国を侵略し、韓国の土地と人を日本のものにした。アジアで日本が犯したことに対する贖罪はまったく行われていない。少なくとも戦争を覚えている私たちは、生涯アジアで起こったことを記憶し、贖罪しなければならないというのが私の考えの根本だ。その精神が平和憲法9条に表現されたものだ」
保守系の朝鮮日報は、
「日本の軍国主義と右傾化を批判し、平和を強調してきた『参加的作家』(編注:さまざまな活動に参加した、の意)として、両国の過去の歴史についても積極的に発言した」
などと紹介。日韓併合条約が結ばれて丸100年が経った2010年、当初から条約は無効だったと主張する「『韓国併合』100年日韓知識人共同声明」に名を連ねたことを指摘した。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)