「励まし」と「救済」の文学 ノーベル賞の大江健三郎さんは何を残したか

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人類の悲惨な状況に心を痛める

   大江さんは反核や平和、沖縄、原発、環境問題などにも心を寄せ、デモや集会に参加するなど一文学者のレベルにとどまらない関わりを持った。こうしたアクティブな行動は、「個人的な体験」を、より広く深く掘り下げたものだったと理解できる。

   日経新聞は2023年3月14日、評伝記事の中で「大江文学の基調をなすのは人類の悲惨な状況とそこからの救済」と書いている。「表面的には私小説の形をとりながら、徹底した自己批評によって、作品世界を修正・進化させていった」。

   他者を励ますことは、自分が励まされること。世界を救済する行動に参画することは、自分も救済されるということ。

   自身以外の人が直面している困難な問題についても、積極的に発言し、行動することが、大江文学を「私小説」から「世界文学」に引き上げるエネルギーとなっていた。

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