普及の過渡期を迎える美容整形は、若年層を中心に寛容化が進むと同時に、ルッキズム(外見至上主義)に関わる問題も懸念されている。未成年も保護者の同意があれば手術可能で、親が子供の整形を主導して物議を醸す事例もある。
望んで整形して「生きやすくなった」と喜ぶ人と、されるがままで後から「自分で決めてないから降りかかる不満を上手く処理できない」と悩む人。対照的な経緯で未成年時に整形した2人が、心境の変化を取材に語った。
自発的に整形した、みきしぃさん
会社員の傍ら、ツイッターで1万7000人のフォロワーを持つ「整形OLみきしぃ(@Qpr_7)」さんは、高校卒業の翌日、自身の強い希望でメスを入れる二重整形に臨んだ。20代後半の現在、整形して良かったかと問うと「もちろん、はい」と力強く答える。
「自分が生きやすくなって、色々挑戦できるようになった。全部、顔を理由にして『これやったら何て思われるかな』とか『これ出来ないよな』って選択肢を潰してきた人生だったので」
「美人の人生を歩んでみたい」という整形願望は中学1年ごろから募りはじめた。容姿を馬鹿にするようないじめによる、コンプレックスの深刻化がきっかけだ。高校では授業中にも涙を流す不安定な精神状態に陥り、人前に顔を晒す抵抗感から不登校気味に。バイトや恋愛、ファッションの楽しみは諦めていた。
コンプレックスや整形については、仲が良かった母に対しても、あまりの辛さと申し訳なさから手術の数日前まで明かせなかった。おおむね察しており、「それで幸せになってくれるなら」と肯定的な反応で費用を負担してもらえたという。
「やっと出来る。本当に何年も思ってたから夢みたいな感じ」とみきしぃさんは振り返る。今となっては、「学生時代に整形してもっと可愛くなれてたら明るい人生送ってたのかな」とさえ述べる。
反対に親主導で整形したのは、恋愛・美容ライターの「りのこ(@ring6565)」さんだ。「親が『整形しろ』と言ってきて、10代の頃に埋没をプレゼントされた...」などと伝えたツイートは物議を醸した。埋没とは、メスを入れずまぶたを糸で縫い留める二重手術である。
「その目は美人じゃない」されるがまま手術
「母は生まれつき二重ですが、私のまぶたは腫れぼったかったので、『その目は美人じゃないから』といって」
りのこさんが高校3年の時だった。もともと整形を肯定的に捉えており、テレビ番組の影響で整形による「変身」への憧れすら感じていたため、母の勧めを受け入れた。とはいえ事前知識もなく、されるがままで手術は進んだ。
「どのような幅の二重が良いか、私は選ばせてもらえなかったです。母が症例写真の本を買って1人でどんな風にしたいかイメージを膨らませて。クリニックを選んだのも母ですし、一緒にクリニックに行った時も、医師に『これくらいの幅にして』と指示して1人で二重幅を決めてしまいました」
母が喜ぶ一方でりのこさんは、まぶたがゴロゴロしたり糸の跡が残ったりと予期せぬ違和感に悩まされた。その割に二重幅が狭かったため顔は大して変わらずという印象で、「あまり納得のいく仕上がりとは言えなかった」と肩を落とす。
埋没法は比較的簡易な手術で、りのこさんの場合は1年で効力が損なわれた。喪失感があり、母からは「お前のケアの仕方が悪いせいで」と責められてしまった。整形後の悩みをこのように吐露する。
「自分で決めてないから降りかかる不満を上手く処理できない。自分が決めたことだったら『でも私がやりたくてやったから』って気持ちになりますが、やりたくてやったわけじゃないと何か起きても周りのせいにしちゃうし、不満があったらそのまま。消化せずにモヤモヤを抱えたままになっちゃう」
「ルッキズムの権化」母との関係
そもそも、どのような親子関係だったのか。母の人物像を振り返る。
「私が小学生の頃は、勉強しなさいと怒るとランドセルの中身を庭にぶちまけて『取ってこい』というくらい過激なしつけをするような人でした」
りのこさんの幼少期から、母は暴力を伴う気性の荒さがあり支配的な行動も多々見られた。中学時はよく反抗していたものの、高校の頃は大学進学に差し支えては困るため、わりあい従順に振舞っていた時期でもある。
極めつけは、「母はルッキズムの権化」。美意識が高く、未整形ながら美人であると自負していた。ルックスを含め子供に対する理想が高く、りのこさんには「(父方に顔が似て)不憫、本当に嫌」「目が残念」などの発言を繰り返していたという。
社会経験を積んだ今、りのこさんは、子供の整形を主導するような親について次の見解を示す。
「何をどうすればいいか本人も分かってない時期に、親が自分好みの顔に作り替えたいと思うのは親のエゴを感じます。本人がしたいと言った時に、改めて考えてあげるのが良い」
整形させるとしても、「すぐにしたいからと決めてしまうのは本当に危険です。親も含めてカモにしようとする医者もいる」と手術方法やリスクをはじめ、料金形態、医者選びなど、丁寧に下調べする必要を訴えた。なかには低価格をうたう広告で誘われ、高額なプランを提示されるケースがあるという。
「子供といえど他人」整形は自己実現の手段
自ら整形を選んだ結果、生きやすくなったというみきしぃさんは、仮に親の立場になったとして「子供といえど他人」と整形の押し付けには否定的だ。整形はあくまで自己実現の手段にすぎず、「人生の目標を達成するために必要ならすればいい」と考えている。
自殺未遂や計400万円の整形など紆余曲折あった過去は、整形そのものが目的になっていた。友人に整形を告白して受け入れられたことをはじめ、容姿にとらわれない人々との巡り合いが自己肯定感を育み、考えを深めたという。
現在は、思い描く人物像を目指して仕事に励んでいる。整形にも容姿にもさして執着がなく、ほとんど年中すっぴんだと朗らかに話す。
整形を望む未成年に対しては、下調べの重要性を訴えつつ、「整形したところで案外周りの人は離れていかない」「過ごせなかった青春が云々と後で言うよりは、今楽しいことをやるという選択肢を選んでも良いのかな」と助言した。
「自分の頭で考えて、納得することが大事」
他方、りのこさんは整形を経て、「見た目を変えるのも大事だが、どうポジティブに生きていくかという生き方を変える方が大事」「内面が変わらなければ人生は変わらない」と気づいた。
ただ、二重の方が化粧を楽しむのに都合が良いとも感じ、手術の効力が損なわれると整形願望が芽生えた。症例調査やカウンセリングを重ねて手術すると、かつてはなかった充足感に満たされたという。
「自分が納得してお願いする先生を選んで、どんな風にしたいか伝えて、お金を払って手術するというその流れ...ちゃんと自分の意思で全て選択したぞという実感があり、すごく満足度が高かったです」
仕上がりも良く、「自分の顔をもっと好きになりました」。取材時は術後まもないタイミングで、りのこさんは「本物っぽくないですか。すごい自然な感じで」と声を弾ませる。
これまでの経験を振り返り、「自分でじっくり考えることが大事」と強調する。自身と同様の境遇におかれる未成年には、りのこさんは次のように呼びかけた。
「自分の人生は自分で選択するという自覚を持って生きた方が満足度が高いです。その代わり、自分の選択に対しては自分で責任を取りましょう。色んなインフルエンサーがおすすめのクリニックを教えていますが、誰が行ったとか流行ってるとかでは判断せず、自分でリサーチして、カウンセリングに行って先生に話を聞いてという体験をして。自分の頭で考えて、納得することが大事です」
この記事はJ-CASTニュースとYahoo!ニュースによる共同連携企画です。