震災から12年...宮城県山元町「集団移転」の現在地 「新たな地域づくり」直面した難しさと手応え

糖の吸収を抑える、腸の環境を整える富士フイルムのサプリ!

「自治会を作る」直面した苦労

   集団移転先となった3地区では、いちからコミュニティーを築かねばならない。橋本さんは、住民が自分たちの力で地域の課題を解決する形を目指す。その基礎となるのが、自治会だ。だが設立・運用は、各地区で事情が異なった。

   3地区で世帯数が最多の「つばめの杜」は、西区と東区に分かれる。西区は2013年4月、東区はその2年後に住民の入居が始まり、自治会が新設された。町東地区の場合、既存の自治会に「融合」。桜塚地区は、造成が遅れ入居開始が2016年12月までずれこんだ。しかも、当初想定していた既存自治会との融合がかなわず、翌17年3月に独自の自治会新設となった。

   お互い顔を知らない住民同士。「自治会を作る」という慣れない作業。設立準備の段階で、橋本さんは徹底した話し合いを重視した。だが「なかなか意見を言わない人が多い。皆さんから話を聞き出すのが大変でした」。会合を重ねると、参加者の顔ぶれがほぼ同じになっていった。それでも限られた時間のなかで自治会を立ち上げ、役員を決め、スタートさせないとコミュニティーの運営に支障が出る。橋本さんは、目の前の課題をクリアするため、プロセスを踏んで合意を形成する手順をこなしながら、物事を前に進めるしかなかった。

   住民同士の交流も促す必要があった。例えば「つばめの杜」では、入居開始から2、3年は、地区単位でのイベントが多かった。お茶会に夏祭り、クリスマス会に新年会......。

「とにかく、人が集まる機会を作りました。ただ参加する人が決まってしまい、出てこない人は出てきません」

   橋本さんは、こう振り返る。2020年以降は、新型コロナウイルスの感染が拡大。オンラインより「会ってナンボ」の年配者が多い3地区では、難しい状況が続いた。

   一方で、気づきも生まれた。例えば「ゴミ収集」のように、生活に直結するテーマは住民誰もが関心を持つのだ。今後は隣近所のような小さい単位で集まる機会を作り、日常生活で直面する課題の情報交換ができるような交流を増やしていきたいと、橋本さんは考える。

姉妹サイト