宅配ピザ大手のドミノ・ピザは、2023年2月13日からピザメニューのサイズ表記を「M・R・L」から「S・M・L」に変更した。中間サイズ相当の「R(レギュラー)サイズ」が、利用者から「わかりづらい」などと指摘を受けたためだとしている。
過去にはマクドナルドがコーヒーに「Rサイズ」表記を使用していたものの、現在は使われていない。また、チェーンによっては「レギュラー」の位置付けが全く異なる。識者は「消費者にとってどのサイズを指しているかわかりづらく、根付きにくいのではないか」とする。
19年から「R」導入も...短命に終わる
「これまで、サイズ選びで混乱させてしまったお客様に深くお詫び申し上げます」――。日本でドミノ・ピザを運営するドミノ・ピザジャパンは、23年2月6日にこんな発表をし、利用者に謝罪した。
同社のピザのサイズ表記は、1985年の創業以来34年間「Mサイズ」と「Lサイズ」の2つを用いてきた。そうした中、19年には利用者のニーズに合わせて、2サイズの中間となる「Rサイズ」の販売をはじめた。当時の「R」の採用経緯について、ドミノ・ピザジャパンのPR担当者は2月22日、J-CASTニュースの取材に「M・Lの間のサイズとして仲間入りする名称として、『通常』を示す『R(レギュラー)』サイズと名付けました」と説明する。
しかし、この判断が利用者の間で混乱を招くことになった。
「登場以来、お客様より『サイズが分かり難い。』『中間サイズのつもりでMサイズ(最小サイズ)を間違えて注文してしまった。』などの声をいただくことがございました。さらにオンライン注文ページの生地選択項目には『ハンドトス(レギュラークラスト)』があり、サイズのレギュラーなのか、生地のレギュラーなのか、悩まれたお客様もいらっしゃいました」(ドミノ・ピザジャパンのニュースリリースより)
こうした声を受け、2月13日からサイズ分類を「M・R・L」から日本で馴染みのある「S・M・L」に変更した。サイズ表記変更後の利用者からの反応について、PR担当者は「『(サイズ表記の違和感は)前から感じていたことなので普通にありがたい』『ありがたい。何度も利用しているがRがどの大きさなのか覚えられなかった』『こういう改善は大切!』といったお声を多数いただき、ご好評いただいております」と話す。
サーティワンは「大」、セブンコーヒーは「小」...玉虫色の「Rサイズ」
「R」をめぐっては、ハンバーガーチェーン最大手のマクドナルドも過去に採用していた。02年5月23日の日本経済新聞朝刊の記事『マクドナルド、コーヒー新商品、提供店舗を拡大』によると、当時のメニュー「プレミアムコーヒー」の「アイスカフェ」にRサイズとLサイズという分類を用いていたことがわかる。
ただ、現在ではコーヒー含むドリンクメニューは「S・M・L」表記に統一され、「R」の文字は見当たらない。J-CASTニュースは過去の「Rサイズ」の採用背景や廃止理由について10日、日本マクドナルドに尋ねたものの、広報担当者は「現在、当時を知る者が在籍しておらず、正しい情報をご提供することができない」とした。
「R(レギュラー)サイズ」を使っているチェーンは、今回廃止したドミノ・ピザ以外にもあるが、その意味は各社バラバラだ。サーティワンアイスクリームでは2サイズ(スモール、レギュラー)あるうちの「大きい方」の意味になる。一方で、カフェチェーン「プロント」の飲み物やコンビニ大手・セブンイレブンのコーヒーでは2サイズ(レギュラー、ラージ)のうちの「小さい方」になる。ドミノ・ピザが「中サイズ」に位置付けられていたことを考えると、「R」は玉虫色のサイズ表記と言えよう。
また、「R」と「L」のボタンがあるセブンイレブンのコーヒーマシンでは、その分かりづらさゆえなのか、ボタンの上に「普通サイズ」と「大きいサイズ」、あるいは「小さい」「大きい」とそれぞれテープが貼られた写真が、SNS上で話題になったこともあった。
消費者心理に詳しい関西大学社会学部の池内裕美教授は22日、取材に「レギュラーという言葉自体が多義的で、使う人や店によって意味が異なる。消費者にとってどのサイズを指しているかわかりづらく、根付きにくいのではないか」と見解を示す。そのうえで、店側が分かりやすい「S・M・L」表記などに変更することで、「『思っていたサイズと違う』などのクレーム防止にもつながるのでは」とした。
飲食業界に詳しいフードライターの笹木理恵氏は13日、「日本の飲食店ではまだまだ、『大盛』『並盛』といった日本語表記も多く、『大盛』の場合でも『並の1.5倍』など丁寧に量が説明されている」とし、店側が「R」サイズを使う場合にはその分量を明記する必要性があるのではないかとした。