「"両立"させる方策こそ議論されてほしい」
防災のプロはどう見るか。
消防用設備の施工などを手がける青木防災(大阪市)は20日、J-CASTニュースの取材に「"残念"という表現は、手間がかけられていないという点で建築意匠にこだわる方目線の意見としては間違っていないでしょう」と答えた。
消火栓は、設置、改修の際に所轄の消防署に相談する必要があるが、デザインについては消防法や自治体の独自規則に規定があるものの細かくは決まっていない。ある建築関係者も取材に「扉の仕上げ(色や形状)についての指導はなく、文字が見やすいような仕上げであればよいと判断されることが多いです」と話す。
「いいね」とされた消火栓も、扉のデザインこそ異質だが「消火栓」の文字は大書されており、消防法は順守しているはずだ。テーマパークや観光地など景観を重視する場では、同様の考えでデザインされた消火栓は少なくない。お笑いタレントの波田陽区さんが、消火栓の写真収集を趣味にするほど実はバラエティに富む。
「本来、建物の防火性能は消火栓のデザイン単体だけで議論するものではなく、建物の構造体としての耐火性能、スプリンクラーやガス消火設備といったメインの消火設備、消防隊の活動しやすいよう進入用の窓の位置や消防活動空地、火災時の煙を逃がす排煙計画、避難計画といったもので総合的に判断するものですが、そこを一般の方に理解頂くことは難しい」
「(デザイン性の高い消火栓を設置している施設は)運用で対応されており、スタッフの防災訓練によって、防火、消火、避難について対応がされていると思われます」(建築関係者)
青木防災は「実用性については、どれだけ目立たせていても使い方を知らなければ、ただの飾りです。例えば安全衛生の観点から、あらゆる消火栓を目立たせる工夫がされている工場などでも、肝心の使い方を誰も知らない...なんてことが実際あります」と事例を紹介し、実用性とデザインの両立を考えると消防訓練が不可欠とした。
公共性の高い建物では、避難経路図に消防用設備の位置がプロットされている場合も多く、これも両立させるためのアイデアだという。「定期的に『もっと消防用設備を目立たせるべき!』と炎上しますが、この"両立"させる方策こそ議論されてほしいですね」と要望した。
もっとも、業界として消防用設備が注目されることは嬉しいといい、「ほとんどの方は『ここに(消防用設備などが)あるって知らなかった...』という状態です。これを機に、身近なところに設置されている消防用設備などを確認してみて下さい」と呼びかけた。
趣味の消火栓集め。
— 波田陽区 (@hata_youku) February 12, 2023
スタッフさんがくれたのを合わせて4種。 pic.twitter.com/m6OVmRX7dc