北朝鮮の金正恩総書記の妹で朝鮮労働党副部長の金与正(ヨジョン)氏が2023年2月20日に国営朝鮮中央通信を通じて談話を発表し、「太平洋をわれわれの射撃場に活用する頻度は、米軍の行動の性格にかかっている」と威嚇した。
米韓両軍が2月19日に朝鮮半島上空で合同訓練を行ったことを受けての反応だとみられる。この談話では、2月18日に大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」型を発射したことについて、韓国側が性能を疑問視したことに多数反論。特に、発射の命令から実際の発射まで9時間以上かかったとする指摘には「考え方がおかしい連中なのか」などと猛反発した。
9時間22分には「液体燃料を注入する時間などが含まれている」?
北朝鮮は2月20日朝にもミサイル2発を発射。ほぼ同じタイミングで与正氏の談話が出された。北朝鮮は7回にわたって、弾道ミサイルを日本上空を通過させる形で太平洋に着弾させている。終盤に「太平洋をわれわれの射撃場に」という文言を盛り込むことで、米国に対して8回目の発射について警告したとみられる。
談話の冒頭には「昨日の1日を見守ったが、推測、憶測、自分なりの評価 ... 実に見ものだと言わざるを得なかった」とあり、多くが2月18日の「火星15」発射をめぐる韓国側の反応をやゆする内容だ。
特にやり玉にあげたのが、命令から発射まで9時間22分かかった、という指摘だ。朝鮮中央通信は、発射が「午前8時に下達された朝鮮労働党中央軍事委員会委員長(編注:金正恩総書記を指す)の命令書によって不意に手配された」と報じたのに対して、実際の発射は17時22分頃だったことが、その理由だ。東亜日報は、この9時間22分に「液体燃料を注入する時間などが含まれているようだ」とみている。
偵察機が着陸したタイミングを選んで発射?
与正氏は、この見解を
「本当に、考え方がおかしい連中なのか、それともあまりにもせせこましくあれこれと分析を多くしてみる連中であるためか、さまざまに分析結果を出した。そうして無理にでもけなしてこき下ろし、評価を固めれば、少しでも自己慰安になるのかも知れない」
などと批判。発射命令には「午前中に発射場の周辺を徹底的に封鎖し、人員とその他の装備を退避させ、安全対策を講じた後、午後の時間中の有利で適当な瞬間を判断して奇襲的に発射すること」が盛り込まれていたとして、米国などの偵察機が着陸したタイミングを選んで発射した、と主張した。
自衛隊のF-15戦闘機が撮影した動画では、ミサイルとみられる物体が閃光(せんこう)を放ちながら、いくつかの破片に分かれて落下する様子が収められている。このことから、再突入に失敗した可能性も指摘されている。与正氏は、この点を
「もし弾頭の大気圏再突入が失敗したなら、着弾瞬間まで弾頭の当該信号資料を受信できなくなる」
などと反論。「情けない青二才」と罵倒した。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)