「昆虫食」市場急拡大も...根強い拒否反応 なぜ受け入れられない?識者に聞いた理由と打開策

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   食糧問題の解決策として世界的な注目を集める「昆虫食」。先進的な取り組みとしてマスメディアなどでしばしば取り上げられるものの、世間からの風当たりはまだまだ強い。外食市場の調査・研究機関「ホットペッパーグルメ外食総研」の調査によれば、回答者のうち約9割が昆虫食を避けると回答したという。

   昆虫食が世間から受け入れられるためにはどのようなきっかけが必要になるのか。J-CASTニュースは、昆虫食に関する情報発信などを行う食用昆虫科学研究会に詳しい話を聞いた。

  • 無印良品「コオロギせんべい」(PR Timesより)
    無印良品「コオロギせんべい」(PR Timesより)
  • ジャイアントミルワームのヴィシソワーズ(研究会提供)
    ジャイアントミルワームのヴィシソワーズ(研究会提供)
  • 無印良品「コオロギせんべい」(PR Timesより)
  • ジャイアントミルワームのヴィシソワーズ(研究会提供)

国内の昆虫食に対する注目は2020年辺りが転換点

   ホットペッパーグルメ外食総研は2023年1月19日、「『避ける』と思われている食品・食品技術」についてアンケート調査した結果を発表した。全国20~60代男女を調査対象にしており、有効回答数は男性517件・女性518件の合計1035件。調査期間は昨年11月18~20日。

   調査結果によれば、さまざまな食品に対する選択肢「絶対に避ける」「できれば避ける」をあわせた数字が最も多かったのは「昆虫食」(88.7%)だったという。 「絶対に避ける」のみの選択肢が一番多かったのも「昆虫食」(62.4%)だった。なお、次に「絶対に避ける」「できれば避ける」の合計が多いのは「人工着色料」(73.5%)で、3位は「3Dフードプリンターで作った食品」(70.3%)だ。

   昆虫食に対する抵抗感を感じる人が多い一方、NTT東日本は23年1月19日、食用コオロギのベンチャー・グリラス(徳島県鳴門市)と共同で、食糧問題の解決に向けて「食用コオロギのスマート飼育」を確立する実証実験を開始すると発表。「今後の需要拡大を見据えて、飼育施設拡大も含めた事業化に向けての検討を進めます」ともしている。

   これ以外にも、無印良品を運営する良品計画(東京都豊島区)が2019年に「コオロギせんべい」の開発を発表し、実際に販売するなどの動きもあった。そのほかにも、食用コオロギを使った商品を開発・販売する企業は多数ある。

   そもそも「昆虫食」が注目されるようになったのはいつ頃からなのか。

   食用昆虫科学研究会の吉田誠氏は23年2月10日、取材に対し、国際連合食糧農業機関(FAO)が食用昆虫と温室効果ガスを絡めたレポートを2013年に発刊し、食用昆虫が世界的に注目を集めたと説明する。日本では、前述した良品計画や敷島製パン(名古屋市)がコオロギを絡めた商品を販売したことで、2020年辺りが転換点となって一気に認知度が高まったという。

「昆虫は100万種以上おり、多様性の象徴でもあります」

   同研究会の伊藤貴広氏によれば、昆虫食の注目度は「かなり高まっている」という。TPCマーケティングリサーチの調査によると、昆虫食の市場規模は、2021年の国内では10.8億円だったとし、2020年から約6割伸びているという。また、日本能率協会総合研究所の調査では、2019年における海外での市場規模は70億円で、2025年には1000億円程度まで伸びると予想されている。

   この理由について、伊藤氏は(1)食糧危機が叫ばれる中で、現在の畜産業と比較し、少ない餌や少ない水、狭い土地で育てられると期待されている昆虫への注目(2)ビジネスチャンスと考える人たちによる企業の増加、これに伴う情報発信量の増加による一般層への認知の高まり――があると指摘している。

   なぜ昆虫食に対して抵抗感を示す人が多いのか。吉田氏は「昆虫は嫌悪感を煽る形で報道されてきました」と指摘する。例えば、衛生害虫として取り上げられる場合などだ。また、罰ゲームとして食用昆虫を食べる、などの扱われ方があったことも理由として挙げた。

   さらに昆虫は「食糧危機の際に食べないといけないもの」「肉が食べられない際の代替のもの」という形で取り上げられ、「食べたくもないのに食べさせられるもの」と認識されているという。「昆虫を食べることを強制されていると感じた方には特に嫌悪感を抱かれているものと推測します」。

   一方、昆虫には次のような側面もあるという。

「昆虫は様々な種類がいて、近年話題を集めるコオロギだけでなく、イナゴなどの伝統食・郷土料理としての側面もあります。食べた経験がある方も多くいますので、伝統的なものとしてポジティブなイメージを持たれていることもあるでしょう。さらに牛や豚と比べて環境負荷が低いことから、エコなイメージを持たれていることもあり、ポジティブな情報も報道されています」

   吉田氏は「昆虫は100万種以上おり、多様性の象徴でもあります」と述べ、「イメージする昆虫がバラバラになりがち」であるため、賛否両論になりやすいと指摘している。

「さまざまな昆虫の美味しさが知られるようになると、世間から受け入れられていく」

   昆虫食が受け入れられるためにはどのようなきっかけが必要になるのか。吉田氏によれば、(1)昆虫があくまでも嗜好品であると認知されること(2)美味しい昆虫が広く食べられること――が重要だという。

   昆虫食を「食べないといけないもの」という強制感を持って食べると反感を持つ人もいるだろうと答える吉田氏は、「昆虫は採捕にせよ養殖にせよ、安いタンパク源ではなく、高価な嗜好品です。タイではコンビニのお酒のおつまみコーナーで売られており、食べたい人が食べるものです」と説明した。

「昆虫の味・香りはさまざまでイナゴの食感、タガメの香り、ヤシオオオサゾウムシのジューシーさなど、魅力を持った昆虫がたくさんいます。さまざまな昆虫の美味しさが知られるようになると、世間から受け入れられていくと考えます」

   吉田氏は、「昆虫の見た目という点は影響があるかもしれませんが、様々な海産物の見た目を気にして食べる方はあまりいないと思いますので、見た目より美味しさが大事です」とも述べた。

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