床下で発見した大吟醸、実は「33年もの」の貴重酒だった! 試飲した蔵元が語る「ヴィンテージ日本酒」の可能性

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   床下貯蔵庫から発見された古い日本酒が素晴らしい熟成をしていた――茨城県つくば市の老舗酒造「浦里酒造店」がツイッターで紹介したエピソードに注目が集まっている。琥珀色に変貌を遂げた熟成酒は、水よりも滑らかな味わいだったという。

   J-CASTニュース編集部の取材に対し、6代目蔵元の浦里知可良さんは2023年2月16日、熟成した日本酒に可能性を感じていると述べる。

  •  床下貯蔵庫から発見された33年前の大吟醸
    床下貯蔵庫から発見された33年前の大吟醸
  • 現在の霧筑波と床下貯蔵庫から発見された33年前のもの
    現在の霧筑波と床下貯蔵庫から発見された33年前のもの
  •  床下貯蔵庫から発見された33年前の大吟醸
    床下貯蔵庫から発見された33年前の大吟醸
  •  床下貯蔵庫から発見された33年前の大吟醸
  • 現在の霧筑波と床下貯蔵庫から発見された33年前のもの
  •  床下貯蔵庫から発見された33年前の大吟醸

先先代の情熱が詰まっていた

   浦里酒造店は1877年に創業し、日本酒「霧筑波」や「浦里」で知られる。浦里さんは30代の若手でありながら、2020年から酒造りの最高責任者「杜氏」を務める。取材に対し、古い大吟醸を試飲した経緯を次のように説明する。

   ある日、客が自宅の床下食材貯蔵庫で発見した古い大吟醸を持ち込み、飲めるかどうか尋ねてきたという。浦里さんが「日本酒には賞味期限がないので大丈夫ですよ」と説明するも、不安そうだったため、客から許可を得てテイスティングした。

「床下という温度変化の少ない環境での熟成によって、カラメル様の甘い熟成香が綺麗に引き立ち、甘みやコクが増して複雑味がグッと増していました。そして一番は、水よりも滑らかな口当たりに驚きました。新酒特有のアルコールのピリピリ感は皆無で、滑らかな飲み口でスルスルと飲めてしまいます」

   出てきたお酒は、浦里酒造店の先先代の杜氏である阿部耕一郎さんが醸した大吟醸だった。米や麹由来の甘みと旨味による複雑味や、大吟醸ならではのキレが共存していたという。色味は、酒中の糖分とアミノ酸による着色反応「メイラード反応」で琥珀色に変化したそうだ。

   浦里さんはツイッターで、平成元酒造年度の全国新酒鑑評会で金賞を受賞した品だと説明し、「30年を経ても全く崩れることなく凛とした佇まいの大吟醸で、この酒の完成度を通して阿部杜氏の酒造りの全てが伝わって来ました」と振り返り、現在の杜氏として身が引きしまる思いだと述べた。

「時が磨いた味わいや価値は日本酒の世界をもっと広めることが出来る」

   今回のケースのように、もし自宅で長期保管していた日本酒が見つかった場合、どう扱うのがいいのか。浦里さんによれば、日本酒はアルコール度数が高いため、腐ったり飲めなくなったりすることはない。熟成により紹興酒に近い味わいに変化するため、中華料理や揚げ物と一緒に飲むのがおすすめだという。

「温度帯的には、常温かお燗(40℃くらいのぬる燗がベスト)がおすすめです。お燗にすると眠っていた香り、味わいが一気に花開きます。
もし、お口に合わないようでしたら、お料理にお使いください。一気に旨味とコクが増します」

   日本酒を長期保存する場合は、加熱処理した火入りの日本酒が熟成しやすくおすすめだという。新聞紙で包むなど遮光したうえで、床下や押し入れなど温度変化の少ない場所で保管するのがいいと説明した。

   浦里酒造店でも、1985年から氷温貯蔵での日本酒の長期熟成に取り組む。定番商品では、3年にわたって氷温貯蔵した酒を販売している。浦里さんは、日本酒にはワインやウイスキーのようなヴィンテージの文化が育っていないとしながらも、時間をかけた味わいやその価値は「日本酒の世界をもっと広めることが出来る」と期待する。

「時が磨いた味わいはどんなに優れた杜氏でも造ることが出来ない味わいなので、この美味しさを広めることが出来るようPRを続けて参ります」
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