ANAホールディングス(HD)は2023年2月15日、25年度までのグループ中期経営戦略を発表した。コロナ禍で落ち込んだ航空需要の回復や、マイルによる非航空部門の強化で25年度はいずれも過去最高となる売上高2兆3200億円、営業利益2000億円を目指す。
25年度には、旅客数も「コロナ前」の水準に回復すると予測。コロナ禍で飛行機の数も減らしてきたが、ボーイング787型機を中心に中・小型機を増やして30年度には「コロナ前以上」の水準を見込んでいる。
2025年度には国際線・国内線ともに「コロナ前」の需要に戻る
航空事業では、フルサービスキャリア(FSC)の全日空(ANA)、格安航空会社(LCC)のピーチ・アビエーション、23年度下期に運航を始める中距離国際線AirJapan(エアージャパン)のすみ分けを加速させる。ANAでは単価の高いビジネス需要を取り込む一方で、残りの2ブランドを、成長の余地が大きいレジャーや訪日需要の受け皿として位置づける。
旅客需要の戻りは国内線の方が早く、「コロナ前」の19年の旅客数を100とした場合、国内線は22年度末に95にまで回復する見通しで、23年度には95~100、25年度には100を予測する。
国際線は22年度末は55で、23年度は70に回復。25年度に100に戻る見通しだ。
これに合わせて、飛行機の顔ぶれも大きく変わる。19年度には3ブランドで300機あった飛行機を22年度には267機に減らす見通しだが、25年度には290~295機と、「コロナ前」を若干下回る程度に戻す。30年度には「コロナ前以上」にする計画だ。
19年度末には「中・小型機72%、大型機20%」だった割合を、30年度末には「中・小型機80%、大型機15%」と、中・小型機の割合を増やす。搭乗率を上げることで、収益性を高めたい考えだ。特に、30年度には中型機のボーイング787型機を100機以上保有する計画で、全体の35%以上を占めることになる。22年3月31日現在の機材数は276で、そのうち787は77機。割合にして27.9%だ。
アジア路線では「ピーチとの分担を深掘りする必要」
一方、25年度の生産量(輸送力)は、19年度比で国内線105%、国際線105%に増やす。飛行機の小型化を進め、数も「コロナ前」よりも少ない状況で、一見すると輸送力が減少しそうに見える中で、「コロナ前」よりも高い輸送力を実現する計画だ。
ANA HDの芝田浩二社長は
「特にアジアの航空領域については、ピーチとの分担を深掘りする必要があるだろう。特に近距離。東アジア、中国も含めて、こういったところの戦略は必要だと思う」
などと話し、主に近距離路線をピーチが分担する形ですみ分けを進める方向性に言及した。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)