大手電機メーカー・シャープ(大阪府堺市)が展開する、家電の音声を声優やキャラクターなどのボイスにカスタマイズできるサービス「COCORO VOICE」が、SNS上で大きな話題になっている。
もともと、インターネットと接続して音声を出すことができる「しゃべる家電」を強みとするシャープだが、音声カスタマイズサービスに力を入れた始めた狙いは一体何なのか。J-CASTニュースが詳しい話を聞いた。
「暮らしの中に『スキ』を増やしたいというニーズは増えてきている」
COCORO VOICEは、オーブンレンジ「ヘルシオ」や電気調理鍋「ホットクック」などシャープ製の家電24機種を対象にした音声カスタマイズサービスだ。
アニメ『ゆるキャン△』に登場するキャラクターや、声優の江口拓也さんや緒方恵美さんなどのボイスをカスタマイズでき、英語や方言なども展開している。キャラによってセリフの内容も変わる。基本的には単品税込3300円で販売されている。
好みにあった音声を選んで家電に設定できる――。公式サイトでは、AI(人工知能)とIoT(モノのインターネット)を組み合わせた「AIoT」の製品(前述のヘルシオなど)は、挨拶やおすすめ、労いなどを音声で話し、暮らしに寄り添うと書かれている。
サービスの1周年を記念したキャンペーンも反響を呼んだ。声優やアニメ&ゲームキャラ、俳優などのジャンルで、ユーザーがカスタマイズしてほしいボイスを投票する企画「あなたが選ぶ 欲しい家電ボイスランキング」だ。
2月8日に結果が発表され、声優の津田健次郎さんやアイドルグループ「SnowMan」の佐久間大介さん、プロフィギュアスケーターの羽生結弦さんなどが選ばれた。ファンからは「○○の家電が欲しいです」といった要望が出たほか、「商品化されたら、絶対、購入します」との声も寄せられるなど、大きな話題になった。
なぜ今回のキャンペーンには大きな反響があったのか。シャープは2月10日、取材に対して次のように答えた。
「本当に多岐にわたるファンダム(編注:熱狂的なファン文化)が形成されている事を改めて実感しております。一人一人の好みが多様になる中、一方で暮らしの中に『スキ』を増やしたいというニーズは増えてきていると考えております。その中で、普段の暮らしに深く関わる『家電』にも自分好みにカスタマイズすることで、QOLを上げられる、とイメージを持っていただけたのだと考えております」
「家電自体のファンになっていただきたい」
COCORO VOICEがサービスを開始したのは21年10月27日。このサービスが始まるきっかけになったのは、発話機能を搭載したロボット掃除機「COCOROBO」を2012年に販売したことだったという。
同社は「ネットに繋げることで、よりさまざまな情報を発信し利便性を向上させていきました」と説明。その後、20年8月にはゲーム『戦国BASARA』と「ホットクック」のコラボモデルを限定販売した。
この商品にはゲームの登場人物の音声を採用しており、すでにホットクックを持っていたユーザーから、同様の機能を追加できるようにしてほしいとの要望が寄せられた。これが、今回のCOCORO VOICE開始のきっかけだったという。
2023年1月22日の日経産業新聞の記事によれば、IoT家電のネット接続割合は、「ホットクック」が6割超になっているという。音声カスタマイズサービスに力を入れる理由について、シャープは「音声発話することで、家電に対して愛着を持ちやすくなる人がいることが分かりました」とJ-CASTの取材に答えた。
自分の好みの音声にカスタマイズすることで、家電に対する愛着が湧くだけでなく、色々なパターンのフレーズを聞くために様々な機能を試してもらうことが狙いだ。「家電自体のファンになっていただきたいと考えております」。
COCORO VOICEは初年度で21コンテンツを展開した。同社は「大変多くの反響をいただいております」とし、緒方恵美さんや、戦国BASARAの伊達政宗というキャラクターなどは1年を経過しても、根強い人気があると明かす。また、このサービスをきっかけに対応家電を新規購入するユーザーもいるという。
今後は「2年目も同等のペースで新たなコンテンツの展開をめざしてまいります」としている。