「Z世代が強盗を繰り返す理由、ついに判明する」「Z世代による回転寿司テロが止まらない」――。2023年1月、若者を実行犯とする連続強盗事件や飲食チェーンでの迷惑行為が相次いで報じられたことを受け、SNS上では「Z世代」にネガティブな印象を与えるような投稿が拡散されている。
識者は「(Z世代は)『多様な価値観』を持ちうる世代だからこそ、負のレッテルを一概に貼ってしまうことは大人として無責任」と警鐘を鳴らす。
「Z世代」は1990年代後半~2010年頃生まれの若者たち
Z世代(ジェネレーションZ)は一般的に1996年~2010年頃までに生まれた人のことを指す。アメリカの世代分類の中でY世代(1980年~1995年ごろ生まれ。「ミレニアル世代」とも言われる)に続く世代と位置づけられ、日本では21年にユーキャン「新語・流行語大賞」トップ10に選出されるなど、近年言葉が定着した。
ニュースリリース配信サイト「PR TIMES」のオウンドメディア「PR TIMES MAGAZINE」の記事「Z世代とは?ミレニアル世代との違い・6つの特徴・心をつかむ3つのポイント」では、 Z世代の特徴として「スマホネイティブ」「デジタルネイティブ」「SNSネイティブ」「コスパと並び『タイパ』を重視」「自分にとっての価値を重視した消費行動」「社会課題への関心が高い」の6つが挙げられている。
1997年生まれのライター・竹田ダニエル氏は、Z世代の視点から日米のカルチャーを比較した著書『世界と私のAtoZ』(講談社、22年11月)の中で、「『社会に革命を起こす先進的なデジタルネイティブたち』というイメージも、メディアを通じて形成されつつある」と、メディアによってZ世代に対するポジティブな印象が作られていることを指摘している。
そうした中、昨今の日本のSNS上では「Z世代」にネガティブな印象を与えるような投稿が相次いでいる。
23年1月には全国各地で若者を実行犯とする連続強盗事件が発生。また、飲食チェーン店などで迷惑行為を起こす若者の姿が相次いで報じられた。一連のニュースに対しては「Z世代やばい」「またZ世代の仕業かよ」「Z世代は本当にどうしようもないの多いな」など、「Z世代」という言葉を用いた反応が寄せられた。
一部のまとめアカウントは「Z世代が強盗を繰り返す理由、ついに判明する」「Z世代、今度はスーパーで大暴れ」「Z世代による回転寿司テロが止まらない」などと、一連の強盗事件や迷惑行為の話題と「Z世代」を結び付けてツイートした。差別的なニュアンスを含むネットスラングがZ世代の間で使われているとする投稿も拡散された。
なお、連続強盗事件や飲食店での迷惑行為と「Z世代」を結び付けた投稿を繰り返していた一部アカウントは、ツイッターの利用ルールに違反したとして、2月10日までに凍結されている。
「なんとなく他人事に」「一括りにされるのは嫌」若者たちの意見は
SNS上でのZ世代に対するネガティブな投稿を、若者はどう思っているのだろうか。1997年生まれの男性はJ-CASTニュースの取材に「『自分はZ世代だ』という自覚があまりない」とした上で「一部の過激な人たちの行動だけを見てその属性やコミュニティ全体を蔑視する行為にはあまり良い印象は持っていません」と話す。
また、「自分はいわゆる『Z世代』と呼ばれる世代に広く共有されているトレンドや常識とかに疎い」とし、「『Z世代がまたやらかした』みたいな論調もなんとなく他人事に感じていて、それ(レッテル貼り)に不快感を覚えたことはないです」とする。
一方、2001年生まれの女性は「まともな人たちがほとんどなのに、迷惑行為を起こしている人たちと一緒にされたくない」、2003年生まれの女性は「昔の時代にもこういう迷惑行為はあったと思う。Z世代だからって一括りにされるのは嫌ですね」と話す。
『世界と私のAtoZ』著者の竹田氏は23年2月5日、取材に「子供の頃からSNSやネットと常につながっていることによって『多様な価値観』を持ちうる世代だからこそ、『負のレッテル』を一概に貼ってしまうことは大人として無責任」だとする。
また、一連の飲食店などでの迷惑行為については「『世代』の傾向というよりも、全世界にどんなことも発信できしまうツールを『社会的責任』や『倫理観』が形成されていない若い人が持ってしまったことの影響を加味すべきではないか」と指摘した。
作り上げられた「Z世代像」は本当か
竹田氏は著書『世界と私のAtoZ』の中で、企業などが作り上げた「Z世代像」について、以下のように批判している。
「マーケティング企業やコンサル会社が『Z世代とは』という概念を資本主義的に作り上げたり、大人の批評家が『〜がZ世代に人気の理由』を勝手に分析したがったり、都合の良い『Z世代の代弁者』を作り上げ、『大人の見たいZ世代像』を押し付けることによって形成される偏見と違和感は増しつつある。さらに大きな問題なのが、日本のメディアがいざ日本のZ世代当事者に対して『意見を聞きたい』と言う際には、実際には『面倒なことになるから大人はしたくない鋭い社会批判』や『なんだかんだ言って子供らしい青臭さ』のようなものを頻繁に求め続けることである。 多様な価値観が存在することこそが『Z世代らしさ』であるにもかかわらず、『Z世代を代表する意見』というものを欲しがるのは、あまりにも矛盾しすぎている」
Z世代に対するイメージとして、環境問題やSDGs(持続可能な開発目標)への関心が高いと伝えられることも多い。ただ、前出の男性は「自分はそこまで環境意識が高いわけではないですし、結局はその人次第なのでは」と首をかしげる。
ネオマーケティング(東京都渋谷区)がZ世代とY世代を対象に22年夏に行ったネット調査によると、「環境問題への関心が高い」という項目では、Z世代の関心度はY世代よりも低かった。また同調査では、Z世代の中で「SDGsへの意識が高い」と答えた人も、全体の中では少数派という結果になっている。
竹田氏は取材に「『最近の若い子はすごい』と同時に『最近の若い子はどうしようもない』という論説は、いつの時代にも存在する」と指摘。その上で「日本の若者たちがなぜこのような問題行動に走ってしまうのか、社会的背景から考えつつ、『なぜこのような若者の悪ふざけばかりを社会全体で糾弾するのか』についても考える必要があるだろう」と話した。
(J-CASTニュース記者 佐藤庄之介)