日本の飲食店で働いていた台湾の女性ユーチューバーが2023年2月上旬、食品衛生に関する告発をして波紋を呼んでいる。
女性によれば、店主からカビの生えた麺の提供を迫られたとし、台湾の大手メディアが相次いで報じる事態になっている。一方、店側はJ-CASTニュースの取材に「偽りの投稿をされ、戸惑っています」と困惑を隠せず、弁護士への相談も検討しているという。
「茹でたら大丈夫」
数万人のチャンネル登録者数を持つ台湾の女性ユーチューバーは2月1日、日本でのワーキングホリデー中のトラブルをフェイスブックで訴えた。
女性はフェイスブックグループでの募集を通じ、都内にある中華料理店でアルバイトを始めた。勤務から数か月たった夏のある日、厨房の冷蔵庫で保管していた麺にカビが生えていることに気付く。
写真を撮って店主に報告したところ、「茹でたら大丈夫」と返事があった。客が体調不良になってしまうと懸念を漏らすと、黙るようにと恫喝されたという。
女性は納得できず、店を辞める決意をした。注意喚起の意味でネットにカビの生えた麺の写真を投稿すると、それを見た人が保健所に通報する騒動となり、女性には報復として給与が支給されなくなった――。
店名は明らかにしていないが、厨房での自撮りやラーメン鉢の写真を投稿しており、これらの情報から都内にある台湾料理店とみられる。チェーン展開する人気店で、運営会社のウェブサイトには出演したテレビ番組や来店した著名人の名前が数多く載っている。
口コミサイトでは、この女性が書いたとみられる1年前の店への投稿が見つかる。女性はフェイスブックの告発文のコメント欄で、店の紹介ページを掲載した人に「グッドマーク」を送っている。
「日本の中国料理店がカビ生えた麺を提供するよう従業員に指示か」
第三者を交えて解決を図ったところ、店主はカビの生えた麵の提供は否定し、給与も無事支払われたというが、日本の食の安全を揺るがす事態になっている。
「台YouTuber日打工 遭逼出餐全用發霉麵(日本でアルバイトする台湾のユーチューバーが、カビの生えた麺を使うのを強いられた)」(台視新聞網)をはじめ、TVBS、東森新聞、華視新聞、聯合新聞網と台湾メディアが次々に報じ、女性に同情が集まっている。
中国系の日本語メディア「レコードチャイナ」も6日、「日本の中国料理店がカビ生えた麺を提供するよう従業員に指示か」と報じ、日本国内でも関心が集まり始めている。
J-CASTニュースは8日、女性に取材を申し込んだが、応じる条件として店に取材をしないことなどを求められたため、やむを得ず辞退した。店がある地域を管轄する保健所は「特定の店に立ち入り検査をしたかどうかはお答えしていない」と取材に話した。
店側の見解は
店の運営会社は取材に、女性の訴えは「事実無根です」と真っ向から否定した。店側の見解は次の通り。
トラブルが起きたのは、2021年8月だった。オーナーが新型コロナウイルスに感染して緊急入院し、臨時休業している最中の出来事だった。
退院後に営業再開へ向けて食材を確認したところ、一部の麺にカビが生えていた。麺はすぐに処分し、従業員や客には提供しなかった。
「茹でたら大丈夫」との発言は、カビの生えていなかった麺を指し、オーナーが実際に食べてみせた。女性に「黙れ」などと居丈高な発言はしていないという。給与の問題も否定した。
保健所の立ち入り検査は認めたものの、「綺麗にされているから問題がないということですぐに帰っていった」と指導はなかったとする。
店は「ここまで偽りの投稿をされ、戸惑っています」と困惑した様子で、「私共も、日々の業務で忙しくしているため必要であれば弁護士に相談をさせていただきたいと思っております」としている。