高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
所得制限撤廃が浮上した児童手当、国際比較から見た「正解」とは?

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   児童手当の所得制限撤廃については自民党内で茂木敏充幹事長が前向きな発言をした一方、西村康稔経済産業相は否定的な見解を示している。撤廃の是非はどうなのか。少子化対策に資するのか。

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児童手当は税と一体的に運用されるのが合理的

   この問題を考える前に、先進主要国の児童手当や税制支援をみておこう。

   児童手当について、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデンは第1子月額2万円程度の制度がある。所得制限はいずれの国でもない。アメリカはない。

   税制支援については、イギリスは児童税額控除、フランスはN分N乗、ドイツは児童扶養控除(児童手当との選択制)、アメリカは児童税額控除がある。スウェーデンはない。

   総じてみると、先進主要国では、児童手当は児童税額控除と一体運営になっており、児童手当の所得制限にそれほど意味はない。

   日本では、児童手当は第1子原則1万円で所得制限があり、税制支援は扶養控除。両者は併存しており、一元化されていない。

   欧米で児童手当と税制支援が一体となっているのは、税と社会保障が一体運営となって、例えば税と社会保険料が一体として歳入庁で運営されているからだと筆者は思っている。児童手当も、広い意味で社会保障関連支出なので、税と一体的に運用されるのが合理的だからだ。

   しかし、日本では、税と社会保障はまったく別物で、財務省と厚生労働省がそれぞれ縦割りで運営している。税と社会保障の一体である歳入庁がないのは先進国では日本だけだ。

   児童手当だけ見ると所得制限は正当化できそうにも見えるが、税と社会保障の一体を前提とし、児童税額控除など税制支援があれば、児童手当で所得制限なしのほうが簡明な仕組みだ。

   日本で児童手当の所得制限があるのは、財源問題とともに税額控除などの税制支援を拒んできた財務省の存在も無視できない。これまで自民党が所得制限に反対してきたのも裏には財務省がいたからだ。

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