トルコ地震、直前発生の「謎の雲」に注目 人気YouTuber「地震雲」と結び付け発信も...識者否定

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   トルコで2023年2月6日に発生した大地震後、日本人の間で「地震雲」への関心が高まっている。トルコで1月中旬に目撃された、バラのような形の不可思議な雲は地震の予兆だったのではとの見方が一部であるためだ。

   影響力のある都市伝説系ユーチューバーも2つの事象を結び付けて「地球では様々な異常現象が起きているのはほぼ間違いない」と主張するも、気象庁、日本地震学会は一様に地震雲の存在を否定する。

  • 写真:ロイター/アフロ
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歌手のASKAさん「東京の空ではいくつも『地震雲』が現れてる」

   トルコ南部ガジアンテップ県で発生したマグニチュード7.8の大地震。トルコメディア「Milliyet」は、8日時点で死者は5984人に上ると伝えている。

   未曽有の事態に直面する中、日本人の間では「地震雲」と結び付けてトルコ大地震を語る人がSNSで複数見つかる。

   トルコ西部ブルサ上空で1月19日、円形が重なった巨大な赤い雲が撮影され、世界中で「UFO(未確認飛行物体)のようだ」と話題になった。これが、地震の前触れだったのではないかとの見方が広がっている。

   チャンネル登録者数約90万人の都市伝説系ユーチューバーは7日、以前にこの赤い雲などの自然現象を取り上げた際、「世界終焉へのカウントダウンが始まったかもしれません」と"予言"していたことから、「当たってほしくなかった」「(赤い雲は)地震雲とは関係がないといわれていますが、地球では様々な異常現象が起きているのはほぼ間違いない」と動画で警告した。

   歌手のASKAさんも7日、「昨日から東京の空ではいくつも『地震雲』が現れてる」と不安をあおるようなツイートをしている。

   トルコで見つかった雲は、複数の海外メディアによれば、「レンズ雲」と呼ばれる。標高の高い山がある地域で発生しやすく、NASA(アメリカ航空宇宙局)は「山や火山の近くで湿った空気が押し上げられたときに形成される」と解説している。

「地震が不安なら日頃からの備えを確認しましょう」

   レンズ雲が見つかったトルコ西部ブルサは、震源地のガジアンテップ県から約950キロも離れている。東京都~山口県の距離に相当する。

   なぜ、真っ赤な色だったのか。米フォーブスは、日の出の時間帯に撮影されたためとしている。その時間は太陽が水平線より低くなる。光が通過する大気が多いため、青や紫のような波長の短い光は拡散する。そのため、可視光のうち波長の長い色(黄色、オレンジ、赤色)がより鮮明に見えるようになる。大気がほこりで汚れていると、オレンジや赤の色がより鮮やかになるという。

   「地震雲」の存在は、学術界では否定されている。日本地震学会はウェブサイトで「地震研究者の間では一般に、雲と地震との関係はないと考えられています」と説明している。根拠として、次の2点を挙げている。

「地下の現象である地震と、大気中の現象である雲とを直接・間接に関連付けるメカニズムが考えられていないことです。地震雲を説明する際に、地震の前の岩石の微小破壊による電磁波の発生が用いられることがありますが、微小破壊で電磁波が発生することはありえるとしても、地下深くで発生した電磁波が 地表に伝わるしくみを十分に説明した学説はありません。さらに、地表に電磁波が伝わったとしても、その電磁波によって地震雲が生じるしくみを十分に説明した学説もありません」
「メカニズムが不明でも、『地震雲』の定義が明瞭で、一定の基準で認定された『地震雲』と大地震との対応例が多数報告されていれば、経験的あるいは統計的に『雲』を地震の前兆と捉えることが可能ですが、実際には、報告されている『地震雲』のほとんどは(中略)不十分・不明瞭で統計的な検討が困難です」

   気象庁も、「形の変わった雲と地震の発生は、一定頻度で発生する全く関連のない二つの現象が、見かけ上そのように結びつけられることがあるという程度のことであり、現時点では科学的な扱いは出来ていません」と同様だ。

   気象研究者の荒木健太郎さんはトルコでの地震後、ツイッターで「何度でも言いますが、雲は地震の前兆にはなりません。巷で『地震雲』と呼ばれることの多い雲は全て気象学で説明できる子たちで、雲の見た目から地震の影響等を判断するのは不可能です。地震が不安なら日頃からの備えを確認しましょう。雲は愛でましょう」と「正しく」恐れる必要性を説いている。

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