讃岐うどんの本場・香川県で生まれた「釜玉うどん」。茹でた麺に生卵と醤油を混ぜて食べるシンプルな料理だが、そのスタイルが今、ラーメン界に押し寄せている。
2022年春に東京にオープンした釜玉中華そば専門店が火付け役となり、各地で「釜玉ラーメン(中華そば)」を提供する店舗が相次いだ。飲食業界に詳しい識者は、その作りやすさなどから、家庭でも浸透する可能性があると話す。
物価高直撃...出した結論は「何も乗せない」
東急東横線・都立大学駅(東京都目黒区)から歩いて30秒。東横線の高架下に店を構えるのが「釜玉中華そば ナポレオン軒」だ。提供される基本の麺メニューは「釜玉中華そば」。小・並・大の3サイズが選べ、小サイズは490円で購入可能だ。
少量の醤油ダレに浸かった太麺の上に、卵黄と白髪ネギが乗った釜玉中華そばは、釜玉うどん同様に麺と卵をかき混ぜて食べる。卓上には「しいたけ酢」「かつお節粉」「きくらげ」などの薬味が置かれ、好きな時に「味変」が可能だ。替え玉を頼むと、1杯目とは違う麺とタレが楽しめる仕掛けもある。
22年3月に同地で店を開いたのは、2000年代の「つけ麺」ブームの火付け役と言われる「つけめんTETSU」などを手掛けた小宮一哲氏だ。なぜ、ラーメンを「釜玉」で提供しようと思ったのだろうか。小宮氏は23年2月1日、J-CASTニュースの取材に、昨今の原材料高が背景にあると説明する。
中華そばに使われる小麦の価格は、北米での不作やロシアによるウクライナ侵攻の影響で海外産・国内産ともにここ2年で大きく上昇。チャーシューに使う豚バラ肉やスープに用いる昆布、しょうゆなど、ラーメンに欠かせない素材の価格も軒並み上昇した。こうした背景もあってか、総務省の調査では、中華そば(外食)の全国の平均価格は20年12月に約600円だったのが、22年12月には約632円まで上がっている。
多くの食材を使うほど物価高の影響を受け、ラーメンの値上げを迫られる現状。小宮氏が考え出したのは、「何も乗せない」という選択肢だった。
「私たち、飲食店は原価率を30%以下にすべきと考えています。つまり原価30円の具を乗せたら販売価格は100円上げる必要が出てきます。そのため、何も乗せなければ大きな値上げを回避出来ると考えました。何も乗せない事が正しく、美味しい麺が出来ていた状況では、釜玉一択でした」