2023年2月1日に放送されたバラエティー番組「ノブナカなんなん?」(テレビ朝日系)で、青森県八戸市の藤川優里市議(42)が特集された。
番組では「平成を彩ったあの伝説美女5人は今?」と銘打った企画を放送。藤川氏は「16年前、『美人すぎる市議』として一躍時の人となった」とVTRで紹介された。藤川氏は2007年に初当選した際に「美人すぎる市議」という表現でメディアに盛んに取り上げられた経緯がある。
「昔はこんな使い方なかったはず」
「○○すぎる」というフレーズは藤川氏以外の人物にも頻繁に使われる。俳優の橋本環奈さん(24)を例に取れば、かつて「天使すぎるアイドル」と呼ばれ、メディアで耳にする機会が少なくなかった。
ただ、「○○すぎる」という表現をめぐっては以前から、
「昔はこんな使い方なかったはず。『~すぎる』は本来、動詞とか形容詞につくものだったような」
「メディアが時々使う『美人すぎる...』という形容詞が気持ち悪いというか,許容不可」
といった具合に、そもそも文法的に間違っているのではないかとする指摘もSNSでは多い。
J-CASTニュース編集部は2日、「○○すぎる」に違和感を覚える人が後を絶たない理由について、国語辞典編纂(へんさん)者の飯間浩明氏に解説を求めた。
「多くの人が使えば、それが規則となり、文法になるわけです」
まず、「○○すぎる」は文法的に間違っているのかについて聞いた。
「文法的とは何かが問題になりますが、多くの人が使えば、それが規則となり、文法になるわけですね。名詞に『すぎる』がつくということなら、夏目漱石の小説にも『珍品すぎる』『好人物すぎる』とあって、昔から珍しくありません。すでに一般的な文法になっています」
となると、「美人すぎる」「天使すぎる」も伝統に当てはまるのだろうか。これについて飯間氏は、
「『すぎる』は、以前は否定的な場合に使うのが普通でした。『珍品すぎる』『好人物すぎる』はマイナス評価なのです。ところが、1980年代になると、プラス評価で『かわいすぎる』などと言う例が増えてきました。対象を肯定しているところが新しい点です。『美人すぎる』もその延長線上にあり、突然現れた言い方ではありません」
と、肯定的な表現に使う例は後から出てきたと指摘する。
「イベントに行きたかったすぎる」なんて表現も!?
では、マイナス評価の言葉が、なぜプラスに転用されたのか。
「それはもちろん、インパクトがあるからです。『とても』『非常に』などの程度表現は、使っているうちにインパクトが薄れてしまう。そこで、本来はマイナス評価の『○○すぎる』を使い、強い効果を狙ったのです。褒めるときにわざと『ずるいデザイン』『卑怯な可愛さ』などと言うのと同じです」
最後に、「○○すぎる」は今後どのように使われていくのか占ってもらった。
「さらに自由度を増していくでしょう。『三省堂国語辞典』の最新第8版では『天使すぎる』のほか『イベントに行きたかったすぎる』のように過去形につく例も載せました。いろいろな場合に程度を強調できる表現になっています。人々がせっかく新しく手に入れた表現ですから、使い捨てにせず、大事に使ってほしいですね」
(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)