志位氏が記者会見で「あの論説につきる」と繰り返す理由
―― 志位氏は、1月23日のぶら下がり会見、26日の定例会見で「あの論説につきる」と繰り返し、自分の言葉で見解を述べませんでした。松竹さんの処分についても言及しませんでした。この状況をどう受け止めますか。安倍晋三元首相が17年の衆院予算委で、改憲までのスケジュールを問われて「相当詳しく読売新聞に書いてありますから、是非それを熟読していただいてもいいのでは」と答弁し、不興を買ったことを思い出す人もいるようです。こういう反応をせざるをないのは、やはり松竹さんの行動が共産党にとって相当具合が悪いというか、「効いている」のでしょうか。
松竹: どうなんでしょうね...。藤田さんの見解と同じことを言うのであれば、自分の口で言えばいいと思うのですが...。藤田論説と違うところに踏み込んでいくのであれば慎重になるのは分かりますが、ちょっと根拠が分かりません。しかも26日の記者会見では、記者が色々と突っ込んで、「もし質問があるんだったら、あなた自身の質問として提起してほしい。そうしたら答えます」とも言っています。記者は自分の質問をしているわけで、何を言いたいのか分かりません。おそらく(藤田論説は)公式見解として出しているわけですよね。もちろん志位さんも何重にも点検した上で、今後の物事は全て枠の中で処理していこうという、おそらく「決まった何か」があるのだと思います。だから、それと別のことを言ったら、「決まった何か」が崩れる、といった懸念があるのではないでしょうか。はっきりしたことは分かりませんが...。
―― 個人的な推測ですが、共産党としては、除籍や除名を避ける形で事態をうまく収めないと、ライトな支持層や無党派層の心証が相当悪くなるので、針の穴に糸を通すような、何らかの方向性を模索していると想像します。
松竹: 先ほどの自衛隊合憲論でもそうですが、志位さんは自分の頭の中ですごく緻密に組み立てて、「これしかない」「これだったら通じる」みたいな思い込みになってしまって、それが国民に通じないかもしれない、という考えはあまりないんですよね、おそらく現時点では。「藤田論説どおり」という答えも、相当自分なりに「これしかない」と考えた結果だとは思います。
―― 松竹さんにとっては「まな板の鯉」ですね。
松竹: 結局、考えたつもりでも、(党としては違憲でも、政権に入った時は)自衛隊合憲論のように通用しないことが多いので...。それで私が困るというか怯えるというか、「どうしよう」みたいなことは全然ありません。私も自然体でいくしかありません。
松竹伸幸さん プロフィール
まつたけ・のぶゆき 1955年長崎県生まれ。79年一橋大学社会学部卒業。89年から2006年にかけて日本共産党中央委員会で勤務。その間、国会議員団秘書、政策委員会・安保外交部長などを歴任した。現在、ジャーナリスト・編集者。かもがわ出版編集主幹、日本平和学会会員、「自衛隊を活かす会」(代表・柳澤協二)事務局長。専門は外交・安全保障。『反戦の世界史』(新日本出版社)、『9条が世界を変える』(かもがわ出版)、『レーニン最後の模索』(大月書店)、『憲法九条の軍事戦略』『対米従属の謎』(平凡社新書)、『慰安婦問題をこれで終わらせる。』(小学館)、『改憲的護憲論』(集英社新書)、『「異論の共存」戦略』(晶文社)など著書多数。