「そういう低レベルな議論には関わりたくない、付き合いたくないですよね」
―― 「藤田論説」後半では、松竹さんの主張について「自衛隊は違憲という党の綱領の立場を根本から投げ捨て」ているとしています。さらに、綱領では「日米安保条約廃棄の旗を高々と掲げています」ともあります。共産党の原則的な立場ではありますが、共産党が参加する「野党連合政権」の構想では自衛隊も日米安保も容認しているわけで、非常に先鋭化した形で情報発信している印象です。「長い間党に在籍しながら、綱領を真剣に学んだことがあるのでしょうか」とまで主張しています。人格攻撃のようにも見えますが、どう受け止めましたか。どう反論しますか。
松竹: 率直なところを言うと、そういう低レベルな議論には関わりたくない、付き合いたくないですよね。本気でそういうふうに思っているのか?と思います。志位さんは悩んで、(自衛隊)活用論も言わないと駄目だと思ったし(編注:00年の第22回党大会決議で「急迫不正の主権侵害、大規模災害など、必要にせまられた場合には、存在している自衛隊を国民の安全のために活用する」ことが盛り込まれた)、違憲というのでは通用しないと思ったわけです(編注: 共産党としては自衛隊は違憲だが、共産党が参加する「野党連合政権」としては容認する、という立場を表明している)。私は、志位さんは志位さんなりに、すごく葛藤があったと思っています。志位さんって、憲法9条を心から愛していて、本当に平和主義者なんです。
私が学生の頃、(志位氏の出身校でもある)東大の人と交流することがあって、びっくりしたことがあります。東大で共産党に入った人の新入者教育では、要するに「9条があるおかげで日本の独立が妨げられている」という教え方をしているんですね。そういう教育をされている党組織の中で、志位さんは「9条絶対」という自分の立場を確立してきた人です。1994年に9条を将来にわたって堅持する方針を打ち出し、「中立自衛」から「非武装中立」へ転換し主導したのも志位さん。それを党首の不破さん(当時委員長だった不破哲三氏)が自衛隊活用論をテレビ討論を通じて言い出して、志位さんは00年の党大会で、自衛隊活用論を盛り込んだ決議を準備せざるを得なくなったわけです。これは推測ですが、「こんなこと言わないと駄目なのか」といった心境で準備していた。だからこそ、私なんかが平気で自衛隊活用を主張したときに、すごく怒って批判したのだと思います(編注: 松竹氏は、この時の対立が原因で共産党を退職している)。その志位さんが15年の安保法制を機に「国民連合政府」構想を掲げて「これで野党政権を」と決断したときに、自分の信念をそのままにしておいては駄目だということで、自衛隊活用論や合憲論を、苦しみながら言っているはずなんですよ。それになのに(「藤田論説」の内容で)藤田さんが本気だったとしたら、そういう自分の党の党首の苦悩を全く理解していない。だから、そういうのには、できるだけ付き合いたくありません(苦笑)。