「空目した」という声がツイッターでたびたびあがる。ある言葉を見た時に文字がよく似た別の言葉と見間違えた、といった意味で使われることが多い。こうした「空目」はなぜ起きるのか。J-CASTニュースは心理学の観点から専門家に見解を聞いた。
「佐々木朗希見る度に佐々木希に空目する」
2023年1月23日の「しゃべくり007」(日本テレビ系)では、プロ野球・ロッテの佐々木朗希投手(21)と俳優の佐々木希さん(34)が初対面する企画が放送された。その際、佐々木希さんは初めて佐々木投手の名前を見かけたのは新聞だと明かしつつ、その際、「自分が新聞に載ってる!」「一瞬自分かと思っちゃって」と自身の名前と誤認したとほほえんだ。
この様子が放送されると、ツイッターには「佐々木朗希見る度に佐々木希に空目するし 佐々木希見る度に佐々木朗希に空目する」という声も。2人をめぐっては以前から、「佐々木希を佐々木朗希に空目した 無理もないだろ」「野球民、佐々木希と佐々木朗希を空目しがち」といった声が度々あがっている。
空目を報告するツイートは他にも、「池井戸潤、井戸田潤...佐々木朗希、佐々木希...あとは...」といったものもあり、佐々木朗希投手と佐々木希さん以外の例も報告されている。なお、広辞苑(第7版)で「空目」を引いてみると、第1義として、「見えないのに見えたように思うこと。また、見あやまること」と記されている。
「『朗希佐々木』と『希佐々木』なら間違える人は減るはず」
「佐々木朗希」と「佐々木希」といった似た文字配列では、なぜ空目が起きるのか。尚絅学院大学で心理学を研究する行場次朗特任教授はJ-CASTニュースの取材に対し、「2つの要因が関連すると思います」として、1つ目に「認知におけるトップダウン処理」という現象を挙げる。
「トップダウン処理とは、概念先行型処理(平たく言えば「思い込み」処理)のことで、迅速性や省力性が求められたりするときに、よく人間が行う処理です(その反対はボトムアップ処理ですが、これはデータ先行型処理で、精度は高いのですが、時間がかかります)」
「『佐々木』という文字列を目にしたときに、野球が好きな方は朗希さんがすぐに思い浮かび、『希』という文字も目に留まるので、仮説的概念(野球選手の佐々木朗希)が確定されます。同じように、女優好きの方は『佐々木』という文字列を目にしたときに希さんが思い浮かび、実際に『希』もあるので、仮説的概念(女優の佐々木希)が確定されます。トップダウン処理には認知を行う個々人のバイアスがよくあらわれ、怖がりの人は心霊写真などにも敏感に反応します」
行場氏は2つ目の理由として、「Reading Habit」という現象を挙げた。
「これは文字を読むときの眼の動き方の傾向や癖のことを示します。日本語では伝統的には上から下だったのですが、今ではほとんど左から右に眼が動いて読字します(アラビア語では右から左ですが)。そうすると、どうしても『佐々木』という文字列が最初に目に入り、1つ目のようなバイアス処理がなされる可能性が高くなります。例えば、『朗希佐々木』と『希佐々木』では最初の漢字が違うので、佐々木朗希さんと佐々木希さんを間違うことは少なくなるでしょう」
(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)