意思決定機関の専従職員の割合を減らしたい
―― 最初聞いたときは冗談と受け取ってしまう人もいると思うのですが、「本気度」は高めだと受け取っていいんですよね。
松竹: (笑)そうですよね、やっぱり誰でも冗談というか、現実味のない話だと思えるわけですよね。だからこの本だって、文春に持っていくまでに2、3別のところに話をしましたが、断られました。ある出版社では、編集長はちょっと左翼っぽい人で、「自分も共感するから出したい」と企画会議にかけましたが、営業がみんな猛反対、みたいな...。だって、今どき共産党がテーマの本で、しかも党首公選。「そんな本が売れるわけがない」となりました。別の出版社では、編集長から「すごく読みやすい文章で書いてあるという点では説得力があると思うが、リアリズムが感じられない」と言われました。
―― 文春から出してみたら重版がかかって良かったですね...!
松竹: 文春でもう最後だと思って、これで駄目だったら自分の出版社(かもがわ出版)で出そうと思っていたのですが(笑)、文春に送ったら3日後ぐらいに編集長さんから「出しましょう。今から(松竹氏が住んでいる)大阪に行きます」と連絡があり、今に至ります。
―― 仮に党首選が行われることになれば公約を出すことになると思いますが、委員長(党首)になったら、党内議論の可視化以外に何をやりたいですか。
松竹: いろいろあります。例えば党の機構改革。共産党が方針を決める上で最大の弱点は、共産党から給与を受け取っている専従の人がみんな決めている、という点です。これが自由な議論を妨げていると思うので、意思決定機関の半数以上は自分の給料で生活している人がなるべきだと思います。あと、「しんぶん赤旗」は、(日曜版以外の)日刊紙は本当に早くデジタル版に移行しないと...。
―― 配達する党員も高齢化が進んで大変だそうですね。
松竹: 配達はほとんど危機的な状況ですよね。外部委託もありますが、それをやってくれる人がいないところは大変です。例えば私が暮らしていた江東区では、本当に広い範囲を1~2人とかでやっているので、配達が朝8時までかかったりします。読者の多くは高齢者で家にいるので、読めるといえば読めるのですが、職業を持ってる人にはもう通用しないので、相当深刻ですよね。それよりも何よりも、「国民と結びつくのに紙の新聞か?そうじゃないだろう」という問題です。紙の新聞は日曜版で十分で、日刊紙を作るのにかかっている莫大なリソースを別の戦略、例えばネット戦略みたいものに当てないと...。(後編へ続く)
松竹伸幸さん プロフィール
まつたけ・のぶゆき 1955年長崎県生まれ。79年一橋大学社会学部卒業。89年から2006年にかけて日本共産党中央委員会で勤務。その間、国会議員団秘書、政策委員会・安保外交部長などを歴任した。現在、ジャーナリスト・編集者。かもがわ出版編集主幹、日本平和学会会員、「自衛隊を活かす会」(代表・柳澤協二)事務局長。専門は外交・安全保障。『反戦の世界史』(新日本出版社)、『9条が世界を変える』(かもがわ出版)、『レーニン最後の模索』(大月書店)、『憲法九条の軍事戦略』『対米従属の謎』(平凡社新書)、『慰安婦問題をこれで終わらせる。』(小学館)、『改憲的護憲論』(集英社新書)、『「異論の共存」戦略』(晶文社)など著書多数。