2023年1月23日に召集された通常国会では、防衛費増額をめぐる増税、育児休業中のリスキリング(学び直し)、岸田文雄首相の長男で政務秘書官を務める翔太郎氏の行動など、政府・与党は防戦を迫られている。
次に野党が争点化するとみられるのがエネルギー分野の議論だ。政府は22年12月に開いた「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」で、次世代原発の開発・建設を推進し、既存原発の60年超の運転を認めることを決めた。政府は11年の東京電力福島第1原発事故後、原発の増設や建て替えに否定的だった。エネルギー価格の高騰を背景に、この方針を大きく転換したことになり、特に立憲民主党は批判を強めている。ただ、野党間でもエネルギー政策のスタンスには幅がある。22年秋の臨時国会で「共闘」した立憲と維新の間にも温度差があり、連携の可能性は未知数だ。
立憲・泉代表「将来には電力の安定供給、原発に依存しない社会は実現可能」
立憲の泉健太代表は1月25日に衆院本会議で行った代表質問で、「電力の安定供給のためには当面、火力や原子力について、これまでの厳格な運転再開の基準やルールを守りつつも必要最小限の活用はあり得る」
とした上で、「『将来の』電力供給のあり方」について問題提起した。原発は、災害や武力攻撃、大規模停電、廃棄物処理の面で他の発電よりリスクが大きいのではないかと主張。次のように、将来的には原発ではなく再生可能エネルギーで電力の安定供給が可能になるとした。
「実は、私たちの行った過去数年の電力消費量に基づいた試算でも、省エネ、再生可能エネルギーの推進、送電網の改革、蓄電技術などを活用すれば、将来には電力の安定供給、原発に依存しない社会は実現可能だ」
立憲の岡田克也幹事長は1月30日の衆院予算委で、政府の方針を
「ウクライナの問題はここ数年続く可能性はあるが、新しい原発を作るという話は、5年や10年の話ではない。時間軸が全然違う。この機に乗じて『原発作る』ということを言ってこなかったのを、ひっくり返して『原発やります』(と政府は言い出した)」
などと批判した。ドイツは30年までに電力消費量に占める再生可能エネルギーの割合を65%に増やすことを決めていたが、22年に、これを80%に引き上げることを決めた。岡田氏は、このことを紹介し、「私は日本も同じ道を行けるはずだというふうに思っている」と話した。
ただ、岸田氏は「ドイツとは置かれている状況が違う」として、次のように反論した。
「エネルギーの安定供給という観点から考えても、日本の置かれている自給率の低さ、中東依存度の高さ、再エネ適地の少なさ...。これは置かれた状況が違うわけだから対応が違う」