スシロー「刑事民事の両面から対処」具体的には? 「寿司に唾」迷惑動画の法的問題を弁護士に聞く

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   回転寿司チェーン「スシロー」を運営するあきんどスシロー(大阪府吹田市)が2023年1月30日、SNS上で拡散された店における迷惑行為について、「刑事民事の両面から厳正に対処してまいります」と公式サイトで発表した。

   男性客が卓上の醤油さしや湯呑みを舐め回して元に戻し、唾をつけた指でレーン上の寿司に触れるという内容の動画が物議を醸している。実際に男性はどのような罪や責任に問われうるのか、J-CASTニュースは弁護士に見解を求めた。

  • 回転寿司チェーン「スシロー」
    回転寿司チェーン「スシロー」
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「信頼関係を損なう重大な事案」男性の罪は?

   動画は元々、インスタグラムのストーリーズに投稿されたものとみられる。ボックス席に座る金髪の男性客が、周囲の様子を伺いながら醤油さしの注ぎ口をひと舐め。積まれた湯呑みを手に取り、口に咥えて回転したうえで元の位置に戻すと、唾をつけた指でレーン上の寿司を数度なでるといった様子だ。

   29日ごろからツイッターでも大きく拡散され、非難の声が相次いでいる。著名人ではお笑いコンビ・ロンドンブーツ1号2号の田村淳さんが「回転寿司のビジネスモデルが崩壊させられてる」と指摘したほか、登山家の野口健さんが「軽い気持ちで犯行に及んでいるのだろうけれど、お店に与える損害は計り知れない」と苦言を呈した。

   騒動を受けて、運営会社は30日に「SNSで拡散されたスシロー店舗での迷惑行為について」とする文書を発表。下記のように受け止めを伝えている。

「お客さまとの信頼関係を損なう重大な事案であると重く受け止めており、日頃スシローの店舗をご利用いただいているお客さまがこのような動画をご覧になることで、大変不快な思いをなさってしまうことは大変遺憾であります」

   スシロー全店で調査するとともに、対象となりうる店舗で消毒などを進めているという。「早急に警察と相談させていただきながら刑事民事の両面から厳正に対処してまいります」とも対応を報告している。

   J-CASTニュースは31日、ネット上で物議を醸している動画をめぐり、法的観点からの見解を「弁護士法人ユア・エース」の正木絢生代表弁護士に聞いた。

   正木弁護士は当該男性について、刑事では威力業務妨害罪と器物損壊罪に問われる可能性があると答えた。前者であれば3年以下の懲役または50万円以下の罰金、後者なら3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処されるという。

   民事では、「威力業務妨害罪や器物損壊罪に該当する行為によって、お店の経済的な利益に損害を与えたということで、不法行為に基づく損害賠償を請求される可能性があります」。

未成年なら保護観察の可能性...保護者に損害賠償も

   威力業務妨害罪と器物損壊罪に問われる可能性があるとする具体的な理由を、正木氏はそれぞれ次のように説明した。

「威力業務妨害罪に該当する要件は、(1)威力を用いること、(2)他人の業務を妨害することです。(1)の『威力』とは、人の意思を抑圧するに足りる程度の勢力を指し、具体的な暴力行為や脅迫文言がない場合でも、意思決定の変更を生じさせる行為は、威力に該当することがあります。

今回問題となっている行為は、醤油さしや湯呑みを舐めて元のあった場所に戻す行為、レーンで回っている寿司に唾を付ける行為で、いずれも、お店の提供する衛生的な安全性を害する行為であり、清潔な醤油さしや湯呑みに取り換えたり、レーンに流れている商品を回収したり等を行う意志をいやおうなしに働かせることになります。このように、今回問題の行為は、人の意思を抑圧するに足りる程度の勢力を用いたものと評価でき、威力を用いたものといえます。

(2)の業務妨害は、実際に業務を妨害することのみならず、業務を妨害する危険性を有する場合も該当します。お店としては取替作業や回収作業という本来なら不要な作業に時間を割く分、商品の提供に遅れを生じさせる危険性を有するので、業務を妨害する危険性を有するといえます。よって、威力業務妨害罪に該当する可能性があります」
「器物損壊罪の『損壊』とは、物理的に使用不可能な状態にする行為のみならず、精神的に使用不可能な状態にする行為も含みます。

醤油さしや湯呑みを舐める行為は、物理的に使用不可能にする行為ではないですが、赤の他人の唾がついた醤油さしや湯飲みを使いたくないと思うのが自然ですから、精神的に使用不可能にする行為に該当します。よって、器物損壊罪に該当する可能性があります」

   ただ、当該男性については高校生だと伝える情報もツイッターで出ており、未成年の可能性もある。その場合は保護処分とされ、保護観察に処される可能性が高いと正木氏は述べる。また保護者については、「未成年者の監督義務者の責任として不法行為に基づく損害賠償を請求される可能性があります」。

撮影者の法的問題は?

   当該動画の撮影者についてはどうだろうか。正木氏によると、単に動画を撮影したに過ぎない場合は撮影行為自体が店の利益を侵害しているわけではなく、法的な問題に問われない可能性がある。

   一方、撮影者がSNSへの投稿もしていた場合、刑事では偽計業務妨害罪、民事では偽計業務妨害罪や器物損壊罪に該当する行為で店の経済的な利益に損害を与えたとして、不法行為に基づく損害賠償を請求されうるとした。理由は下記のとおりだ。

「偽計業務妨害罪の要件は、(1)偽計を用いること、(2)業務を妨害することです。(1)の「偽計」とは、人を欺罔・誘惑し、あるいは人の錯誤・不知を利用することを指します。

すでに述べたような衛生的な安全性を害する行為を不特定多数の者が閲覧できるSNS上に投稿することによって、お店の衛生的な安全性に対する信頼を揺らがせることになり、お客の困惑を誘発させることになるので、偽計を用いたといえます。

業務妨害に関しては、すでに述べたとおり、実際に業務を妨害することのみならず、業務を妨害する危険性を有する場合も該当するところ、お店の衛生的な安全性が損なわれることで、失ったお客からの信頼を取り戻すという本来なら不要な作業に時間を割く分、商品の提供に遅れを生じさせる危険性を有するので、業務を妨害する危険性を有するといえます。よって、偽計業務妨害罪に該当する可能性があります。なお、偽計業務妨害罪の場合、威力業務妨害罪と同様、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます」
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