茨城県のカフェの前にたたずむ雪だるまに寄せられた「お願い」がSNSで注目を集めている。珍しい積雪を楽しんだ大人たちが本気で制作した雪だるまだそうで、子供たちに対して触らずにかわいがるよう呼びかけていた。しかし雪だるまは、誕生からわずか3日で壊されてしまったという。
雪だるまを作ったカフェのオーナー・ひかるさんは2023年1月31日、ダイレクトメッセージを通じてJ-CASTニュースにその胸中を述べた。
沖縄出身のオーナーが常連客たちと作った「ほんきのゆきだるま」
今季最強の寒波の影響で24日夜、関東の一部地域でも雪が降った。水戸市の夜カフェ「ORIGAMi」の店の前にも白い雪が広がる。25日、店の前に三段雪だるまが現れた。その横の看板には、子供たちに向けた呼びかけが記された。
「おとなたちのほんきのゆきだるまだからさわらないでとけるまでかわいがってね」
雪玉は汚れ無く真っ白で、きれいな球体をしている。マフラーや服のボタン、鼻先を表現した飾りも施され、大人たちの情熱がにじむ。
オーナーのひかるさんが25日、ツイッターでこの様子を紹介すると9000件を超えるリツイート、14万4000件を超える「いいね」が寄せられる大きな反響があった。リプライ欄には「こんなに綺麗なまんまるできるんですね!」「大人げないところが好き」などと楽しむ声が集まった。
取材に対しひかるさんは、雪だるまを作った経緯を次のように説明する。ひかるさんは鹿児島県奄美群島・与論島から上京し、新宿や銀座での活動を経て、20年2月に水戸で店を開いたという。積雪を見て「島国育ちの身としてはまたとないチャンス」と捉え25日未明、店の常連客たちと店外に繰り出した。
「いい歳した大人が集まってこの寒い中、鼻を啜って作ってるんだ..すげぇのつくろう。と少ない雪をみんなでかき集め、お客様の車の上に積もった雪も集め出来るだけ白く、大きくと、、育てました。 ポイントは顔です。鼻は人参がなかったのでオレンジのマニキュアをぶっ刺しました」
気象庁のウェブサイトによれば、水戸市の25日の最高気温は0.9度、最低気温はマイナス4.9度だった。
我が子のように大事にするも・・・
ひかるさんは、雪だるまが週末まで残るよう看板を設けた。
「暖を取りに店内と行き来しながら何とか作り上げた雪だるまには情がうつるもので我が子を少しでも沢山の人に見せることが出来たらと思い、週末のお客様まで生き残ってくれよ、、?と思わず筆をとりました」
店が面する商店街は通学路だといい、「道行く大人にクスッと笑って頂き、できるだけ長い期間、そして多くの子供達に雪にも暖まるこの深夜の気持ちを共有出来れば」という思いで文面を考えたという。
ひかるさんは、雪だるまの経過をツイッターに掲載し続けていた。しかし28日、雪だるまは倒れた状態で見つかったという。
ひかるさんが「けられた」というコメントに添えた写真では、一番上の雪玉は粉々になり、残った2段目と3段目の雪玉も地面に転がっていた。
「強いショックは受けましたが形あるものです」
取材に対しひかるさんは、商店街近隣の人々の情報により蹴られてしまったことが発覚したと述べる。
「強いショックは受けましたが形あるものです。ここから私自身、そしてツイート越しに見てくださった皆様へ生まれる想いも得る教訓もきっとあると信じ、ツイートに経過共有をさせていただきました。溶けぬ謎も、積もる想いも上着の中にしまいます」
ひかるさんは雪だるまの投稿をきっかけに、ツイッターで多くの人々から温かい声が寄せられたとして、次のように受け止める。
「"彼"は結果として週末のお客様を待つことなく崩れてしまったわけですが、ふと思い立って写真を撮りツイートしたものがこんなに大きな反響を頂いたことで週末のお客様は勿論沢山の人の目に止まり、届いた事がこれ以上なく嬉しかったです」
31日現在、商店街の雪はすべて溶けたという。ただ崩れてしまった雪だるまの半身だけが店の前に残されているそうだ。
おとなたちのほんき #雪だるま pic.twitter.com/oxqGaLAixM
— ひかる (@H__ka__ru__) January 24, 2023