岸田首相の「育休中リスキリング」炎上発言、一部で擁護も 「質疑見たら印象変わった」「大家議員の認識のズレの問題」

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   岸田文雄首相の「育休中リスキリング(学び直し)」発言が大ひんしゅくを買っている。

   SNSでは「家事育児しながら勉強する暇あると思ってるの?」と批判が殺到し、政府は釈明に追われている。一方、発言の一部始終を確認するとあながち的外れでもないとの擁護もある。

  • 岸田首相
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子育てでのキャリア停滞最小限に

   批判を集めたのは、2023年1月27日の参院代表質問での答弁だった。

   自民党の大家敏志参院議員から、企業が産休・育休中の在職者に行っているリスキリング支援を国としてもサポートするよう提案された。リスキリングによって「一定のスキルを身につけたり、学位を取ったりする方々を支援できれば、子育てをしながらもキャリアの停滞を最小限にしたり、逆にキャリアアップが可能になる」との考えからだ。

   リスキリングは、特にDX(デジタルトランスフォーメーション)人材の不足を背景に国際的に注目されている。世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)は「リスキリング革命」を提唱し、2030 年までに10億人にリスキリングの機会を提供するとしている。

   国内では、日立製作所や富士通、三菱UFJフィナンシャルグループなど大企業を中心に活発で、帝国データバンクの22年9月調査では、実施している企業は48.1%だった(約1万1600社を対象)。ベネッセの子育て情報サイト「たまひよ」は2019年の時点で「育休中に資格取得するママ増加中!? どんな資格を目指す?勉強時間の確保は?」と記事で伝えており、産休・育休中の自己研鑽へのニーズが高まっているとしている。

   岸田首相は「政府としては、人への投資の支援パッケージを5年で1兆円に拡大し、リスキリングへの支援を抜本的に強化していく中で、育児中などさまざまな状況にあっても主体的に学び直しに取り組む方々をしっかりと後押しして参ります」と答弁し、軌を一にするとした。

岸田首相「私自身も3人の子の親です」

   この発言を27日夜、大手メディアが「賃金上昇に向け 産休・育休中の"学び直し"を『後押し』岸田総理」とウェブで報じると、「家事育児しながら勉強する暇あると思ってるの?」「育休なんだから育児に集中させろよ」「育休=休み、ダラダラしてるって勘違いしてない?」とSNSで多くの反発を招いた。

   「岸田首相『育休中の学び直し』答弁に批判 『育児してない人の発想』」(毎日新聞)、「育休中のリスキリング『後押し』、首相答弁に批判高まる」(朝日新聞)、「『育休中に学び直し』岸田総理発言がSNSで波紋...批判続々『育児していない人の発想』」(テレ朝news)と27日~30日にかけて報道も相次ぎ、いわゆる「炎上」状態となった。

   松野博一官房長官は30日の会見で、「産休・育休中にリスキリングを強いるような趣旨ではない」と火消しを迫られた。

   岸田首相も同日の衆院予算委員会で「私自身も3人の子の親です。子育てが経済的、時間的、精神的に大変だというのは目の当たりにしてきたし経験もしてきました」と述べ、「ライフステージのあらゆる場面において学び直しに取り組もうとする際に、本人が希望した場合にはそれをしっかり後押しできる環境整備を強化していくのが大事である」との趣旨だと釈明した。

「学びたい人には支援しますよって答弁だった気がする」

   岸田氏の発言は、育児の実態を理解していないと呆れる声が多いものの、一方で「質疑の動画見たら印象変わった」「大家敏志議員の認識のズレの問題な気がします。どちらも自民党なので結局は同じなんですけど」「育休中のリスキリングを提案してるのは大家議員で、岸田総理は『それも含めて支援』と言ってるだけ」「育休中に学び直しをしろって話じゃなくて、あくまでも『企業を支援します』って話だよね?」「学びたい人には支援しますよって答弁だった気がする」と擁護する向きもある。

   主な質問内容と答弁は次の通り。

   大家議員:岸田総理は施政方針演説において、構造的な賃上げ政策の一環として、新たな分野で活躍するための能力・スキルを身につけること、いわゆるリスキリング支援を位置付けておられます。企業経由となっている支援を、個人への直接支援に見直すことなどが極めて重要です。岸田総理、ぜひともご検討いただきたい新しい案を、私からお示しいたします。

   子育てのための産休・育休がなぜ取りにくいのか。理由の一つが、一定期間仕事を休むことで昇進・昇給で同期から遅れを取ることだと言われてきました。しかし、この間にリスキリングによって、一定のスキルを身につけたり、学位を取ったりする方々を支援できれば、子育てをしながらもキャリアの停滞を最小限にしたり、逆にキャリアアップが可能になることも考えられます。

   大胆なこども政策を検討する中で、たとえば、リスキリングと産休・育休を結び付けて、支援を行う企業に対して、国が支援を行うなど、親が元気と勇気をもらい、子育てにも仕事にも前向きになるという、2重・3重にボトルネックを突破できる政策が考えられるのではないでしょうか。

   この政策によって、結婚・育児期に女性の就業率が低下する「M字カーブ」や、育児後は非正規で働くようになる「L字カーブ」の解消にも資するものだと考えます。今ある仕事が、近い将来、AIに取って代わられることも予想され、私たちのキャリアにとって、リスキリングが当たり前になる時代が来る中、このようなリスキリング支援メニューの拡充が必要になるのではないかと思いますが、総理のお考えをお伺いいたします。

   岸田首相:政府としては、人への投資の支援パッケージを5年で1兆円に拡大し、リスキリングへの支援を抜本的に強化していく中で、育児中などさまざまな状況にあっても主体的に学び直しに取り組む方々をしっかりと後押しして参ります。

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