識者「もはや新たに打つ手がないに等しい状況」
警察庁のデータによると、全国のゲームセンター等(風俗営業5号営業)の営業許可数は、1986年の2万6573軒をピークに、2021年には3882軒まで減少。ゲームセンターが減った背景には、家庭用・携帯ゲーム機やスマホゲームの普及などがあると指摘される。
コロナ禍による外出自粛も、ゲームセンター運営に打撃を与えた。ただ、ゲームセンターでの店長経験があり、日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表のライター・鴫原盛之氏は1月26日、取材に「2022年のオペレーション(店舗)売上高が、月次ベースで見るとコロナ禍以前(19年)の数字にほぼ回復しているオペレーター(事業者)も現れている」と説明する。
背景にあるのは利用者が景品(プライズ)を獲得できる「クレーンゲーム」の好調で、ゲームセンターの中には近年は収益性の低いビデオゲームやメダルゲームの代わりにクレーンゲームコーナーを広げる例が多く見受けられるという。クレーンゲーム同様、「ガチャコーナー」の導入も進んでいるとした。
ただ、昨今の電気代の大幅値上げは、資金繰りが厳しく、ビデオゲームを中心にラインアップする小規模店舗には深刻な影響を与えると指摘する。
「昔ながらのビデオゲーム中心の小規模店舗は極めて深刻で、このままでは今春以降に発売が予定されている新作タイトルの購入や、バージョンアップのための資金が用意できない店舗が続出することが予想されます。どこの店でも、諸経費の削減や不人気タイトルの撤去、売却など、可能な限りの経営努力はずっと以前から行っており、今なおコロナ禍が続く状況では、大規模な集客イベントを開催したくても開催するのは難しく、もはや新たに打つ手がないに等しい状況です」
また鴫原氏は、コロナ禍に金融公庫から融資を受け、現在も返済中の個人経営・小規模事業者にとっては、今回の電気料金高騰を受けた返済計画の根本的な見直しが「必至の情勢と言えるかと思います」とする。小規模ゲームセンター存続のためには「行政からのさらなる経営支援、あるいはゲームメーカーが新作の発売時期をスライドするなどといった、早急な対応が必要ではないかと思われます」とした。
「ファンタジスタ」店長の大島さんは「『今日はいつもより少し多めに遊ぼう』『両替した100円は使い切ろう』『財布の中の100円を使い切ろう』のような小さい積み重ねが(店にとって)大きな力になります。具体的に言えば、一人あたり1日300円多く遊んでもらえればうちはこの危機を乗り切れます」とし、「友達同士で声をかけあってお店に足を運んだり、お店で仲間を見つけたりして楽しい時間を過ごしてほしいです」と呼びかけた。
町のゲームセンターが、厳しい春を迎えようとしている。