元局アナ進行、参加型配信、オウンドメディアで記事化 用意周到だったトヨタ「マスコミ中抜き」会見

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   トヨタ自動車は2023年1月26日、一大ニュースであるトップ人事を、マスコミを「中抜き」する形で伝えた。

   自社の"報道番組"で速報するなどオウンドメディアをフル活用して発信し、生活者に強く印象付けた。

  • トヨタイムズニュースより(編集部で一部加工)
    トヨタイムズニュースより(編集部で一部加工)
  • トヨタイムズニュースより(編集部で一部加工)

「できるだけ早く、正しくお伝えするため」

   トヨタは26日、佐藤恒治執行役員(53)が次期社長に昇格すると発表した。豊田章男社長(66)は会長に就き、内山田竹志会長(76)は退任する。

   世間を驚かせた人事は、まずトヨタのコーポレートサイトで発表された。間髪を入れず、自社のユーチューブ番組「トヨタイムズニュース」で"速報"し、「緊急生配信」と題して3人が出演した。

   元テレビ朝日アナウンサーでトヨタ所属ジャーナリストの富川悠太氏が司会を務め、さながら記者会見のように進行。豊田氏は「(人事の)内容をステークホルダーの皆様に、できるだけ早く、正しくお伝えするために、急きょこうした場を設定しました」と意図を説明する。

   約1時間半におよんだ配信では、社長交代の狙いや佐藤氏の所信表明などが語られた。番組と銘打つだけあり、写真やスライド、VTRを織り交ぜてわかりやすさを意識した構成だった。

   質疑応答では、遠隔からビデオ通話で参加した記者の質問に答えた。ユーチューブのチャット機能を公開していたため、視聴者からも感想や疑問点が活発に飛び交った。

   通常の記者会見で設けられる撮影タイムに代わり、"スクショタイム"が用意された。3人が並んだ宣材写真がスタジオのモニターに映され、富川氏が「報道関係者の皆様、スクリーンショットなどで保存していただけると幸いです」と案内した。

   最後は、配信終了後に「最後、(佐藤氏に)笑顔が欲しかったね」「緊張したー」「ちょっと力入っちゃいました」と、豊田氏らの雑談が流れてしまう"オチ"まであった。

トヨタイムズ、報道機能を強化へ

   番組が終わってまもなく、オウンドメディア「トヨタイムズ」でも、「豊田章男社長がトップ交代 後任・佐藤執行役員(53)に託した想い」と記事を配信する用意周到ぶりだった。

   一連の情報発信を、好意的に受け取った人は少なくないようだ。SNSなどでは「自社メディアの出来栄えが凄い」「記者会見全部この形式でいいな」「煽り記事経由だけではなく、こうして直接本人からも話を聴けるのはいいことだ」と評価する声が多く寄せられている。

   トヨタイムズは、トヨタ社長の肝いりで2019年に始まった。俳優の香川照之氏(22年末で契約終了)を編集長に抜擢し、自社の動向を主に取材記事の体裁で発信している。

   富川氏が22年4月、テレ朝を辞めてトヨタに転職した際はメディア業界を中心に大きな話題となった。12月末から始まった「"本当のこと"を伝えるためのオウンドメディア」と標榜する番組「トヨタイムズニュース」の司会を担当している。

   富川氏は番組内で、豊田氏から「トヨタイムズの報道をやっていきたいんだという話がありました」と舞台裏を明かしている。豊田氏は2023年の年頭挨拶で、トヨタイムズニュースを毎週配信していくと宣言している。

根強いメディア不信

   ロイター通信は27日、豊田氏はメディア不信を背景に、トップ人事の発表を「自動車業界の動向を記録する際、最も公正な情報源と考える報道機関を選んだ」と報じた。つまり、誤報や誤解を避けるため、オウンドメディアを発信の中心に据えたということだ。

   続けて、「日本最大の広告主の1つであるトヨタが、従来のメディアを避けようとする試みは、大企業による世界的な傾向の一部」と指摘し、PR部門を解体してSNSでのコミュニケーションを重視する米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)を例示した。

   豊田氏はトヨタイムズニュースで、記者から13年あまりの舵取りを問われ、「自分以外の誰かのためにと動いているにも関わらず、時々、誹謗中傷的なものがあったのは非常に残念だったと思います。日本の競争力をあげようだとか、自分以外の誰かのために動いていくリーダーというのはね、どうして伝わらなかったのかなっていうのが残念ではあります」(発言ママ)などと振り返っている。

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