一年の中で最低な映画作品や俳優を決める「ゴールデンラズベリー賞」(ラジー賞)に12歳の子役がノミネートされたことをめぐり、議論が巻き起こっている。
ツイッター上では「少なくとも大人を対象とすべき」「いじめを助長する」などと、選出への批判が殺到した。大会主催者は謝罪し、子役をノミネートから除外。今後は18歳以下の俳優を賞の候補としない方針を示した。
11歳子役も批判「子供を選ぶのは間違っている」
ラジー賞は1981年にコピーライターのジョン・J・B・ウィルソン氏が創設。一年の中で最高の映画を決める米アカデミー賞の前夜に行われることが特徴で、これまでにシルヴェスター・スタローンさん、ケビン・コスナーさん、ウィル・スミスさんなどの名俳優が受賞している。
今年のノミネート作品・俳優は現地時間2023年1月23日に発表され、米俳優マリリン・モンローさんを題材にした映画「ブロンド」が「最低映画賞」など最多8部門でノミネートされた。次いで、ディズニーアニメを実写化したトム・ハンクスさん主演の「ピノキオ」が6部門でノミネートされている。
そうした中、物議を醸しているのが、SFホラー映画「炎の少女チャーリー」で発火念力を持つ少女を演じたライアン・キエラ・アームストロングさんが最低主演女優賞にノミネートされたことだ。アームストロングさんは現在12歳の子役で、映画撮影時は11歳だった。
ツイッターでは「ただただひどい」「少なくとも大人を対象にすべきではないか」「芸術に挑戦し、リスクを冒した子供たちを全国的に侮辱することは明らかに悪い考え」などと英語で批判が殺到。また、マーベルのドラマ作品「ワンダヴィジョン」などに出演している11歳の子役・ジュリアン・ヒリアードさんは24日、ツイッターで「子供を選ぶのは間違っている」「なぜ子供のいじめを助長する危険に晒すのか」などと、選出に疑問を呈した。
主催者は本人への「正式謝罪」望む
批判の声が高まる中、1月25日、ラジー賞主催者のウィルソン氏が声明を発表したと米CNNなど複数メディアが報じた。声明でウィルソン氏は「11歳のアームストロングを我々の賞の候補に選んだことへのまっとうな批判があり、我々がいかに無神経であったかに気づかされました」とし、ラジー賞のノミネートからアームストロングさんを除外したと伝えた。現在、ラジー賞公式サイトの最低助演女優賞のノミネートリストからは、アームストロングさんの名前が消えている。
同氏は「アームストロングさんには正式に謝罪が必要だと考えており、私たちの選択の結果、彼女が傷ついたことを遺憾に思うと申し上げたい」と本人への謝意を伝えた。さらに、今後は18歳以下のパフォーマーやフィルムメーカーをノミネート候補としない方針を示した。
なお、前年のラジー賞では俳優のブルース・ウィリスさんに「2021年公開作のブルース・ウィリスによる最低演技賞」を特別賞として授与。しかし、その後ウィリスさんが失語症のため俳優活動の引退を発表したことを受け、同賞の授与を撤回している。