「会長に叱られることを恐れての虚偽報告」
角川氏は、社内外で「角川家は君臨すれども統治せず」と吹聴していたという。しかし、実態は違ったようだ。
角川氏は社内規定上、業務執行において具体的な権限は持っていない。しかし、「会長案件」と呼ばれる肝いりのプロジェクトが多数あり、主に次のような特徴があるという。
・赤字事業であってもやらざるを得ない
・忖度により、バラ色の事業計画が作成される
・社長ですら、事業撤退、縮小の判断を適時に行うことができない
・会長のわがままについては誰も言えない
・会長に叱られることを恐れての虚偽報告
・(一部案件につき)KADOKAWA と財団(公益財団法人角川文化振興財団)とが渾然一体で取引関係や費用負担が不明瞭な部分がある可能性がある
「会長デビュー」という社内の関連用語もあり、人事評価、人事異動での強い影響力がうかがえる。局長クラスの人事の際、角川氏と面識のない人物だと「一回会わせろ」という慣例があり、了解がないと昇進できないという。
ある社員は、角川氏の権勢を実感したエピソードをこう振り返る。
「会長と打合せをすると、社長の松原氏が、エレベーターの扉が閉まるまで、90 度のお辞儀をして見送る。松原氏が、会長をお見送りして、エレベーターの扉が閉まるまで 90 度のお辞儀をするというのは、結構な権力関係、見え方だと思う。それは、(本件のような案件を)止めれないんじゃないですかね、という感じ」
調査委は、事件の要因を「とりわけ会長であった角川氏の意向への過度の忖度とそれを醸成する企業風土に本件の根本的な原因があったと考えられる」と指摘し、ガバナンス(企業統治)の改善を提言している。