プロボクシングの世界バンタム級4団体統一王者でWBO世界スーパーバンタム級1位・井上尚弥(大橋、29)の次戦相手にWBC・WBO世界スーパーバンタム級王者スティーブン・フルトン(米国、28)が浮上した。
米スポーツ専門チャンネル「ESPN」(WEB版)が2023年1月18日、両陣営が対戦合意に達したと報じた。今年5月の日本開催を目指している。
「全体的によくまとまったバランスの良い選手」
フルトン戦が実現すればスーパーバンタム級転向後の初戦が世界戦となる。WBCとWBO王座を保持するフルトンはどのようなボクサーなのか。J-CASTニュース編集部は、元世界2階級制覇の亀田和毅(31)が所属するTMKジムの金平桂一郎会長(57)に解説してもらった。
豊富なアマチュア経験を持つフルトンは14年10月にプロデビューした。21年1月にWBO世界スーパーバンタム級王者アンジェロ・レオ(米国、28)に挑戦し判定勝ちを収め王座を奪取。同年11月にWBC世界スーパーバンタム級王者ブランドン・フィゲロア(米国、26)と2団体王座統一戦を行い、判定勝利で王座統一に成功した。戦績は21戦全勝(8KO)。
フルトンの試合映像を何度も見ているという金平会長は、「パンチ力など突出したものは見られないがスピードがあり手堅い選手。恵まれた体格を生かし戦略に優れている。ボクシングの幅が広く、全体的によくまとまったバランスの良い選手という印象が強いです」と解説した。
ボクシングスタイルについては「ややアウトボクシング寄りですがインファイトもできる」とし、「KO率はそれほど高くはないが攻撃力はある。しぶとさもあり挑戦者にとって攻略しづらいチャンピオンであり、負けにくいチャンピオンだと思います。チャンピオンとして長く防衛できるタイプだと思います」と分析した。
「より攻撃的なスタイルを選択する可能性も」
金平会長が注目するのは、井上戦が日本で開催された場合のフルトンの戦い方だ。実現すればフルトンにとってアウエーのリングとなる。
プロモーターとして海外での世界戦を何度も経験している金平会長はアウエーの戦い方の難しさを指摘する。
「時差によるコンディショニングもそうですが、観客の声援などがボクシングスタイルに影響を与える可能性はあると思います。フルトンは本来、強引に倒しにいくタイプではないが、明確にポイントを取ろうとしてより攻撃的なスタイルを選択する可能性がある。ホームのアメリカならば自分のペースで戦うことができますが、アウエーのリングでは本来のスタイルではないボクシングを選択せざるを得ないケースも出てきます。フルトンがどのようなボクシングを選択するのか注目したいです」
井上戦が実現すれば昨年6月以来のリングとなり、WBCは2度目、WBOは3度目の王座防衛戦となる。