「美術館で足音が響きにくい靴」をプロ打楽器奏者が絶賛 ニッチ需要の商品が驚きの活躍...メーカー「大変光栄」

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   「今までの本番靴の中で一番かも」――ミュージアム鑑賞を楽しむために開発された「音が響きにくいエナメルTストラップシューズ」が、プロの打楽器奏者に絶賛された。静かに歩き回れる仕様が、舞台を動き回る音楽家のニーズに応えた。

   J-CASTニュースは、靴を開発したフェリシモ(神戸市)と、愛用する打楽器奏者・腰野真那さんに取材した。

  • 音が響きにくいエナメルTストラップシューズ
    音が響きにくいエナメルTストラップシューズ
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    音が響きにくいエナメルTストラップシューズ
  • 音が響きにくいエナメルTストラップシューズ
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「余計なことを考えず演奏だけに集中することが出来る」

   腰野さんはオーケストラでの演奏を中心に活躍する打楽器奏者で、2016年から新日本フィルハーモニー交響楽団に所属している。ツイッターで2023年1月16日、フェリシモの靴を「打楽器奏者のために作られたかのようにめちゃくちゃ良い」と評した。靴の音が静かで、本番の公演で愛用しているという。

   紹介した「音が響きにくいエナメルTストラップシューズ」は、21年10月に発売された。3センチのヒールが設けられているが、美術館のアートに集中できるよう、靴音が出にくく作られている。外観は黒のエナメル素材で、ストラップが設けられている。長時間歩き回っても疲れないよう、履き心地にもこだわっているそうだ。

   取材に対し腰野さんは、日ごろから公演に適した黒い靴を探していたと述べる。オーケストラの演奏では、全身黒のフォーマルな衣装を着用することが多いためだ。

「打楽器奏者の場合は、立って演奏する、脚を大きく開く、移動や動きが大きいのでネジや突起物に引っかからないようにする、など、その他たくさんの制約や都合があるので、買い物の際はいつも、ちょうどいい黒い服や靴が無いかとチェックすることが癖になっています」

   フェリシモの靴はSNSの広告を見て気になっていたそうで、買い替えのタイミングで購入。その履き心地に感動した。

「音楽家は自分の出す音が全てです。それが商品になります。自分が出す楽器の音に、本来必要の無い靴の音が混じると、自分の商品に自分で傷をつけているような気分になるんです。 このフェリシモさんの靴なら自分の音だけを考えられます。そして、履きやすさや、疲れにくい所もとても助かっています。本当に、余計なことを考えず演奏だけに集中することが出来る靴なんです」

打楽器奏者が靴に求めていたこと

   腰野さんは、演奏する時はその楽器に合わせて靴を選んでいるという。ヒールの高さがほとんどないものから高いもの、楽器に触れた際に音の出にくい材質のものなど、使い分けている。

「オーケストラの打楽器奏者は、とてもたくさんの種類の楽器を担当します。そのほとんどが立って演奏するものですし、楽器自体の高さを調節出来ないものもあります。特に欧米のメーカーの楽器は、小柄な私にとっては高すぎるものも多いのです」

   ヒールの高い靴は音が出やすい。特にコンサートホールの舞台は、ヒノキなどよく響く木材で出来ていることもあるそうで、音の出にくい靴を求めていた。それだけではない。

「演奏中、立ちながら片脚でペダルを踏み、もう片方の脚だけで体重を支えるなどの楽器もあるので、ヒールが細いものは不安定で履けません。
そしてオーケストラの他の奏者はドレスやタキシード、燕尾服などのフォーマルな装いなので、打楽器奏者だけがカジュアルなわけにいかないのです。
『靴の音が鳴らず、安定感がある靴』というだけならたくさんあるのですが、そこへ『ドレスアップしたフォーマルな装いの中でも浮かない』となるとなかなか無く、今まで納得出来るものに出会えませんでした」

   腰野さんの紹介ツイートは拡散され、20日19時までに約8000件のリツイート、約2万5000件の「いいね」が寄せられる大きな反響があった。他のツイッターユーザーからは「舞台袖を動き回る時に良さそう」「生徒の発表会やコンクールの付き添いなど何かと舞台上に出ないといけない時に重宝しそう」と関心を持つ声が寄せられている。

「もともとニッチな需要に振り切って開発したアイテムでしたが...」

   取材に対しフェリシモは20日、ツイッターで客から「ミュージアムに行くときに、マナーに合わせて履ける靴が欲しい」というリクエストを受けて開発したと説明する。

   要望を受けたフェリシモは、ニッチすぎる需要ではないか、共感できる人々がいるのか、を調べるために21年2月、ツイッター上でアンケートを実施した。その結果を受けて、「疲れにくく・靴音が気になりにくく・デザイン性を備えた靴」の開発に着手した。

「これまでになかった商品のため、靴音が響きにくい素材探しからはじめて、機能性、デザイン性、安全性などさまざまな要素で検討を重ね、開発に半年以上を要しました」

   こだわりは「鑑賞に集中できる実用性と、テンションが上がるデザイン性の両立」だという。大好きな時間や空間を楽しめるようなデザインを意識した。また、雨の日に美術館へ行くという声が多かったことから、ある程度の防水性も持たせたという。

   売れ行きは発売以来好調といい、SNSでもたびたび話題になっている。腰野さんが話題にしたことによる予約受注もあったそうだ。

「今回、打楽器奏者の腰野真那様が取り上げてくださったことやその予想外の反響に驚くとともに、大変うれしく思っております。
もともとニッチな需要に振り切って開発したアイテムでしたが、別の専門的なニーズの方にも届いたということでびっくりしています。
大切な公演の現場で活躍させていただけること、大変光栄に思っております」
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