カルビーが2023年1月以降、日本では見慣れないポテトチップスを試験的に展開している。
商品名は「熱浪(ねつろう)」。実は過去に日本で定着できなかったものの、香港で大人気となったスナック菓子だ。
1993年終売の「エスニカン」
「香港大ヒット商品上陸!」――。黒と赤を基調としたパッケージには、こんな惹句が踊る。筆文字で「熱浪」と大書され、味は「ホット&スパイシー」だという。ポテトチップスでおなじみのキャラクター、通称「ポテト坊や」も描かれている。
2023年1月から、イオンやイトーヨーカドー、西友、一部のセブンイレブンなどで販売している。
香港では有名なこの商品、歴史をたどると日本と深いつながりがある。カルビーは1986年、辛さが特徴のポテトチップス「エスニカン」を発売した。当時は空前の激辛ブームで、火付け役だった湖池屋「カラムーチョ」(1984年発売)の対抗馬だった。
香辛料入りのエキゾチックな辛さが売りで、プレスリリースによれば「パッケージは、当時は珍しかった"黒"を基調に異文化をイメージしたデザイン」。当時の報道では「激辛タイプのポテトチップスは数多いが、エスニックタイプはまだ珍しい。一風変わった味が、現代人を刺激しているようだ(中略)出荷ベースで年間百億円近く、予想のほぼ二倍を見込んでいる」(1987年11月12日、日経流通新聞)と伝えている。
しかし、発売から2年後には激辛ブームに陰りがみられたようだ(「あの"激辛"はどうなったの?! 1年半...去ったブーム」1988年9月3日、朝日新聞)。定番化はならず、1993年に終売した。
「辛さ(熱)が波のように、やってくる(浪)」
ところが、海を越えて定番化を果たしていた。
日本と同じ1986年から、香港でも「熱浪」として展開していた。カルビー広報部は16日、J-CASTニュースの取材に、商品名を「試作品を食べた時の『辛さ(熱)が波のように、やってくる(浪)』という経緯に由来しています」と説明する。
広報によれば、香港でも当時は辛い味のポテトチップスが人気を博していた。時代の波に上手く乗り、日本では叶わなかったロングセラー商品に押し上げた。カルビーブランドは香港のポテト系スナックで過半の市場シェアを誇り、その中でも売上1位だという。
カルビーが海外の自社商品を紹介するウェブサイトでも、香港の欄には「ベストセラーの『ポテトチップス熱浪』をはじめ、『かっぱえびせん』や『サッポロポテト』など数多くの商品を製造、販売しています」と、日本での売れ筋商品を押しのけ熱浪が筆頭だ。
現在はテストマーケティングの一環として日本で販売している。2月からは販路を増やし、上記以外のスーパーやドラッグストアなどでも数量限定で売り出す。「今後、複数回テスト販売を実施し、商品力などを検証した上で今度の展開を検討します」(広報部)